「安和事故」映像は不都合な真実か 元朝日記者が沖縄で書いた記事を読んでみた 大手町の片隅から 乾正人


都内に住む心中を装った殺人事件の犯人が、地方紙を短期間購読したのを不審に思った作家が謎を解明していくという筋立てだ。

■「地方紙を買う男」の目

私も犯人ではないが、「地方紙を買う男」の一人である。仕事柄、各地を旅することが多いが、駅に降り立つと必ず地方紙を買う。小学校の運動会やコメの出来具合などご当地新聞しか報じない情報満載で重宝する。最近は、有料のデジタル版で読める地方紙も増えており、いくつかは期間を決めて購読している。

沖縄の琉球新報もそのうちの一つだ。視点が弊紙とは百八十度違うので、勉強になる。9月25日付の1面を飾った「『心は折れない』言葉から勇気 新基地抗議の市民思い新た 安和事故 被害女性に寄せ書き」という記事もそうだ。

琉球新報と沖縄タイムスの地元2紙が「安和事故」と名付けた事故は、6月28日に米軍普天間飛行場の移設予定地である名護市辺野古に近い同市の安和桟橋前の道路で起きた。辺野古「新基地」反対運動に参加していた72歳の女性が、抗議活動中に警備員とともにダンプカーに巻き込まれ、警備員は死亡、女性も重傷を負った。

同記事は、彼女が「フェニックス(不死鳥)さん」と呼ばれていると紹介。「女性が手術前に残した『骨は折れても心は折れない』の言葉に奮い立った市民が目立つ」と断定し、「新基地断念まで小さな力を結集させたい。再び戦場にさせない」といった彼女への寄せ書きをいくつも書き連ねている。

明治の昔、自由民権運動の先頭に立っていた板垣退助が暴漢に刺され、「板垣死すとも自由は死せず」と語った逸話を思い起こす。

何よりビックリしたのは、1面の記事の中に亡くなった警備員を悼む言葉が一言もなかったことだ。記事を書いた南彰記者は、新聞労連委員長を務めた元朝日新聞の記者で、琉球新報に移籍した有名人である。

■映像の中身報じぬ沖縄2紙



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