老後「文句ばかり言う人」「人生を楽しむ人」の決定的な違い
42歳でパーキンソン病に侵された精神科医のエッセイが、韓国で売れに売れている。『もし私が人生をやり直せたら』という本だ。「自分をもっと褒めてあげようと思った」「人生に疲れ、温かいアドバイスが欲しいときに読みたい」「限られた時間を、もっと大切にしたい」と共感・絶賛の声が相次ぎ、35万部以上売れているという。
そんなベストセラーエッセイの邦訳が、ついに刊行される。男女問わず、多くの人から共感・絶賛を集める本書の内容とは、いったいどのようなものなのか? 本書の日本語版から抜粋する形で、「人生の限りある時間」の過ごし方について書かれた項目を紹介していく。
● 「私は、実は恵まれている」と考えられるか?
パーキンソン病と診断されたばかりの頃、私はすべてを失ったと考え、世の中を恨んでいました。しかしある時、私は実はとても恵まれているということに気づいたのです。よく考えてみたら、病のために失うことが多くても、それでもまだ自由にできる分野もたくさん残っているのですから。
まず、どうしても体が言うことを聞かない状態を経験しているので、少しでも動かせる時はそれだけでも感激です。手の指、脚、そして足の指が動かせることは、なんとありがたいことでしょうか。また、パーキンソン病の代表的な症状に認知症がありますが、私にまだその傾向が現れていないことも奇跡です。ですから、この本を執筆していること自体が奇跡そのものです。
また、病院を畳んだ後、患者さんたちには会えなくなりましたが、それでも私のそばにいてくれる人たちがいて、彼らがいかに大切な存在なのかも悟らせてくれました。
特に娘です。彼女のおかげで、私は2人の孫たちの「お婆ちゃん」になることができました。私が両親から受け継いだ生命のバトンが、娘を通じて孫たちに受け継がれているという奇跡を目にしながら、人間の営みが綿々と受け継がれている事実に感嘆するばかりです。42歳でパーキンソン病と診断され、65歳を過ぎた今、強くそう思います。
● 日々の心がまえについて
私が大切に思っていた人生の価値が、娘、そして孫に伝わっていることを見るにつけ、私自身も毎日をなおざりにできないと決意を新たにしています。彼らがこれから生きていく世の中をよくするためなら、影ながら力になりたいと思っています。
こうした悟りは、ひとりひとりに与えられた人生からのプレゼントのようです。人生の春と夏が過ぎ、秋の入口で過ぎ去った時間を収穫して、ようやく手にすることができる豊かなプレゼントです。
(本原稿は『もし私が人生をやり直せたら』から一部抜粋、追加編集したものです)
キム・ヘナム/岡崎暢子