日本映画史上、最も切ないラストは? 苦すぎる結末の邦画(1)罪悪感に泣き崩れる…リアルな別れを描いた名作


『ジョゼと虎と魚たち』(2003)

【作品内容】

 平凡な大学生・恒夫(妻夫木聡)は、麻雀店でアルバイトをしながら細々と生計を立てていた。

 そんなある日。犬を散歩している彼の元に、ベビーカーに乗せられた少女・ジョゼ(池脇千鶴)が現われる。包丁を振り回す彼女にびっくりする恒夫だが、彼女と交流するうちに次第に惹かれていく。

【注目ポイント】

 本作は、田辺聖子の同名小説を実写化した作品。監督は後に『メゾン・ド・ヒミコ』(2005)を発表する犬童一心で、障がいを持つ女性ジョゼと恒夫の恋愛模様を描いている。

 誰とでも関係を持ってしまうような、やや浮ついた大学生活を送っていた恒夫。彼ははじめ、興味本位でジョゼの家に出入りしていたが、一緒に過ごすうちに次第に恋愛感情が芽生える。同じくジョゼも恒夫を大切な存在と思うようになり、2人の関係はかけがえのないものに変わっていく。

 恒夫はある日、身体が不自由なジョゼに外の世界を見せたいという思いから、彼女をドライブに連れ出し、動物園に行ったり、海に行ったりと、2人だけの思い出を作る。しかし、やがて2人は別れてしまう。

 その後、大学生の同級生・香苗(上野樹里)と付き合い始めた恒夫は、なにげない会話の最中に突然泣き崩れる。障がいのあるジョゼから逃げ出した自分の情けなさと、彼女を振ったことへの後悔が堰を切ってあふれ出したのだろう。

 しかし、ジョゼはというと、何事もなかったかのように日常に戻り、家で魚を焼いていた。恒夫のほろ苦い感情と、淡々と前を向くジョゼの力強さ―。2人の心持ちの対比で物語は幕を下ろす。

(文・シモ(下嶋恵樹))

シモ



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