釧路市内を車で走っていると、雄大な湿原のなかに、突如として太陽光パネルの海が現れる。なぜ、釧路なのか。なぜ、外資系業者の参入を止められないのか。住民、土建業者、市長、徹底取材した。
国立公園内にも太陽光パネル
「これ以上大切な湿原が壊されれば、観光業も落ち込んでしまう。エゾシカなどの野生動物にも大きな影響が出るでしょう。もうメガソーラーを作って欲しくないと思っている人はたくさんいますよ」
釧路市内で旅館業を営む女性は、うんざりした様子でこう語った。
北海道東部に位置する釧路市は、人口約15万人、面積約1300の広大な都市だ。市内には2万8000ha(東京ドーム6100個分)もの「釧路湿原国立公園」があり、’80年には湿地の保全を目指す「ラムサール条約」に日本で初めて登録された。湿原とその周辺部には2000種以上の動植物が生息し、なかにはタンチョウやキタサンショウウオなど絶滅危惧種も含まれる。
そんな自然の宝庫がいま、太陽光発電の乱開発にさらされている。
釧路空港から車で東へおよそ40分。湿原の中を突っ切る「釧路湿原道路」を走っていると、おびただしい数の太陽光パネルが目に飛び込んでくる。驚くことに、国立公園となっている湿原内でも太陽光発電の開発が行われているのだ。
外資も殺到している
約1・5kmにわたり続くパネルは、「すずらん釧路町太陽光発電所」と「釧路町トリトウシ原野太陽光発電所」のもので、230万(東京ドーム49個分)の土地に37万枚が並べてあるという。釧路市内でも、そこかしこでこうした光景が見られる。
釧路市の職員が明かす。
「市内にあるメガソーラー(発電容量1MW超)は22ヵ所。小規模なものを含めると、正直、どの程度あるのか把握しきれません。太陽光パネルを作りたいとの問い合わせは昨年度だけで数百件あり、今年はさらに増えている。そのなかには、外資も数多く含まれています」
湿原がある日突然、太陽光発電所に変わる―この職員はそう表現して危機感を募らせた。
「国の特別天然記念物のタンチョウの営巣地と、市の天然記念物キタサンショウウオの生息地も太陽光で潰されています。現在、市に照会のあった太陽光の計画地のなかで、約1000万がキタサンショウウオの生息地と重なるのです」
釧路に太陽光発電が急激に増えたのはこの10年のことだ。’14年6月には釧路市と隣の釧路町を合わせてメガソーラーは1件だったが、現在は27件。発電容量10kW以上の施設は116件から771件に急増した。