「女性宮家」実現に向けた天皇家からのメッセージ 成城大教授 森暢平


 2011(平成23)年秋から冬に入るころ、平成の天皇(現在の上皇さま)は、側近を通じて、重大なメッセージを発したと私は考える。皇位継承問題は一旦棚上げし、まずは「女性宮家」を実現してほしいというものだ。こうした天皇家のメッセージは、「『女性宮家』は女系天皇に繋がる」と主張する保守派に潰されてしまった。(一部敬称略)

 11年10月5日、宮内庁長官(当時)、羽毛田(はけた)信吾は、首相官邸を訪れ、民主党政権の首相野田佳彦に対し、「女性宮家」創設の検討が「火急の案件」だと訴えた。内親王が結婚しても皇室に残れるような仕組みの創設が喫緊の課題と伝えたのである。

 この前後から、宮内庁と内閣官房は勉強会を設け、「女性宮家」創設に向けた検討項目の協議を開始した。野田政権は12月14日、皇室典範改正に向け、有識者から意見聴取を行う考えを示した。宮内庁の訴えかけによって、政治が動き始めたのである。

 この直前、4年前まで侍従長であり、当時は宮内庁侍従職御用掛だった渡辺允(まこと)(22年逝去)の著書が密(ひそ)かな注目を集める。12月6日発売の『天皇家の執事』文庫版である。単行本として2年前に発売された書籍が文庫化された。文庫版には、最後に6ページ分の加筆部分、「皇室の将来を考える―文庫版のための後書き」という小文があった。

 このなかで渡辺は、平成の天皇は10年以上、皇位継承問題で真剣に悩み続け、夜、眠れないこともあったと明かす。これは、いったい何を指すのだろうか。

 おそらく、皇太子ご夫妻(現在の天皇ご夫妻)がなかなか子宝に恵まれず、結婚8年後に授かったお子さまが、現行皇室典範では継承が認められない内親王であったことが、天皇の悩みの源泉にあったのではないか。思い起こすに、羽毛田の前任、湯浅利夫は03年6月10日、皇太子ご夫妻の第2子への期待について「はっきり言って一方ほしい」と発言している。同年12月11日にも、「皇室の繁栄を考えると、(秋篠宮家には)3人目を強く希望したい」と述べた。



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