27日投開票の衆院選では、各党とも現在40代半ばから50代半ばとなった「就職氷河期世代」を含む現役世代への支援を公約でうたう。働き盛りの年代にもかかわらず多くの困難を抱え、正規の職に就けなかったり、家庭を持ち得なかったりした世代だ。「自分以上に若者が苦しむ社会であってほしくない」。北信地方に住む当事者の介護職男性(46)は、やるせなさを抱きつつ、せめてもの希望を見いだせないかと論戦を見つめる。
条件のいい仕事「今更…」
衆院選の公示が間近に迫った13日、男性は自家用車の運転席でスマートフォンの画面を目で追っていた。「65歳以下」「経験者歓迎」。自分の条件に当てはまる求人はある。「でも今更…」。正社員など条件のいい介護職を探して数カ月。転職を続けてきた経歴に自信を失い、恥ずかしさを消せない自分がいた。
卒業後に待っていた厳しい現実
北信地方の高校を卒業後、県外の介護福祉の専門学校に進み、訪問介護員(ホームヘルパー)の資格を取得した。お年寄りからの温かい言葉に介護職のやりがいを感じていたが、卒業後に待っていたのは厳しい現実だった。
就職できず、アルバイトで食いつなぐ
バブルが弾け、日本が長い不況の中を進んだ時代。社会に出た途端に未曽有の就職難に直面した自分たちに付いた呼び名は「就職氷河期世代」だった。介護業界を中心に始めた就職活動は一向に結果が出なかった。実家に戻り、引っ越しやごみ収集のアルバイトで食いつないだ。
22歳で就職、人間関係にも悩み9年で退職
22歳の時、親戚の紹介で県内の病院に介護士として正規採用が決まった。月の手取りは16万円。まとまった給料に喜びを感じたのもつかの間、賃金はいつまでたっても上がらない。「再就職は簡単ではない」と踏ん張ったが、職場の人間関係の悩みもあり、9年勤めて退職した。
2008年に襲ったリーマン・ショック
男性が30代を迎えていた2008年、日本はリーマン・ショックに伴う不況に直面。正規採用の就職先は再び先細った。国は1999年の労働者派遣法改正で、一部職種に限定していた派遣労働を原則自由化。2004年には製造業でも解禁された。20年には新型コロナウイルスの感染拡大で非正規雇用を中心に失業者が増加。追い打ちをかけるようにさまざまな商品で物価が上がった。