世界最大の湖、カスピ海が急速に縮小 浅瀬は完全に消滅との予測も


【写真】カスピ海沿岸に位置するカザフスタンの港湾都市アクタウ

これらの国々は、漁業、農業、観光、飲料水、そして石油とガスの埋蔵量をカスピ海に依存している。またカスピ海はこの乾燥地域の気候を調整し、中央アジアに降雨と湿気をもたらす役割も担っている。

しかし、カスピ海は問題を抱えている。

ダム建設、過剰採水、汚染、さらには人為的な気候危機がカスピ海の衰退に拍車をかけ、一部の専門家はカスピ海が取り返しのつかないところまで追い込まれているとの懸念を示す。

気候変動は世界の海面を上昇させるが、カスピ海のような内海や湖の場合は話が変わる。カスピ海は、川や降雨によって流れ込む水と蒸発によって流れ出る水の微妙なバランスに依存している。このバランスは地球の温暖化に伴って変化しており、多くの湖が縮小している。

未来がどうなるかは近くを見ればすぐに分かる。カザフスタンとウズベキスタンにまたがるアラル海はかつて世界最大規模の湖だったが、人間の活動と深刻化する気候危機によって壊滅し、ほぼ消滅した。

何千年もの間、気温の変動や氷床の前進と後退により、カスピ海の水位は変動してきた。しかし、ここ数十年で水量の減少が加速している。

各国が進める貯水池やダムの建設といった人間の活動は重要な影響を及ぼしている。カスピ海には130の川が流れ込んでいるが、水の約80%は、ロシア中部と南部を蛇行しながら流れるヨーロッパ最長の川、ボルガ川がもたらしている。

テヘラン大学の中央アジア・コーカサス研究の専門家、バリ・カレジ氏によると、ロシアは40基のダムを建設し、さらに18基の建設を進めている。これにより、カスピ海に流入する水量が減少している。

一方で気候変動はさらに重大な影響を及ぼしている。蒸発率が上昇し、降雨量がより不規則になっているのだ。

ドイツ・ブレーメン大学の地球システムモデル研究者、マティアス・プランゲ氏によると、カスピ海の水位は1990年代半ばから低下しているが、2005年以降はその速度が増し、約1.5メートル低下している。

プランゲ氏は、今世紀末までに8~18メートルの低下が予測されると指摘する。

2100年までに最大30メートル低下する可能性があると示唆する研究もある。この研究の共著者は、地球温暖化のより楽観的なシナリオでも、カスピ海の北部、主にカザフスタン周辺の浅瀬は完全に消滅するとの見方を示す。

カスピ海固有の野生生物にとって状況はすでに悲惨だ。ここには数百種の生物が生息しており、世界のキャビアの90%を供給している絶滅危惧種の野生チョウザメも含まれる。

専門家によると、少なくとも200万年陸地に囲まれてきたこの海は、その極度の孤立により非常に変わったザルガイなどの生物が出現した。

しかし、水位が下がったことで深部の酸素レベルが下がり、何百万年もの進化の過程で生き残った生物を絶滅させる可能性があるという。これはほとんど誰も知らない大規模な危機だ。

カスピ海にのみ生息している絶滅危惧種カスピカイアザラシも危機にひんしている。繁殖場所としているカスピ海北東部の浅瀬は変化し、消滅しつつある。汚染や乱獲にも苦しめられている。

カザフスタンの水生生物生態学研究機関の研究員アセル・バイムカノバ氏は、航空調査でアザラシの大幅な減少が明らかになったと述べた。

カスピ海北東部にある一つの休息場では09年に2万5000頭が確認されたが、20年の春には1頭も観察されなかったという。

この危機に対する簡単な解決策はほとんどない。カスピ海は政情不安を数多く経験してきた地域にある上、5カ国にまたがっている。各国はさまざまな形でカスピ海の衰退に直面することになるだろう。



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