中国経済の低迷を受け、政府は3年前の「双減」政策による厳しい規制をひそかに緩和し、学習塾市場に復活の兆しが見え始めています。本記事では、この変化の背景、保護者の反応、そして今後の展望について詳しく解説します。
復活の兆し?学習塾市場の現状
2021年に施行された「双減」政策は、生徒の学習負担と保護者の経済的負担を軽減することを目的として、営利目的の学習塾事業を厳しく制限しました。大手教育企業の時価総額は暴落し、多くの雇用が失われました。
2019年9月、広東省広州市の天河区で学校に向かう子どもらとその親
しかし、競争の激しい中国の教育システムにおいて、子どもの学力向上を願う保護者の需要は根強く、学習塾は水面下で活動を続けてきました。ロイター通信の取材によると、政府関係者や業界関係者は、雇用創出を重視する政府が学習塾業界の成長を黙認する姿勢を見せていると証言しています。
保護者の声:変化する学習塾と揺れる想い
中国南部のミシェル・リーさん(36歳)は、2人の子どもに数学の個別指導や英語のオンラインレッスンを受けさせるため、毎月3000元(約6万4000円)を支出しています。リーさんは、以前は隠れるように営業していた学習塾が、最近は以前よりオープンに活動するようになったと語っています。
厳しい教育環境の中で子どもが落ちこぼれないようにするため、塾に頼らざるを得ない保護者は少なくありません。リーさんも、子どもの学習支援に限界を感じ、外部の力を借りる選択をした一人です。
政府の動き:規制緩和の背景と今後の展望
公式な発表はありませんが、国務院は8月に消費拡大に向けた計画の中で「教育関連サービス」を明記しました。また、教育省は学校外学習指導の指針案を示すなど、規制緩和の動きが加速しています。
ロイター記事のスクリーンショット
INGの大中華圏担当チーフエコノミスト、リン・ソン氏は、政府が規制姿勢を緩める方向に進むと予測しています。コンサルタント企業オリバー・ワイマンのクラウディア・ワン氏は、政府は質の低い事業者を淘汰した上で、教育産業が深刻な若年層失業率の改善に貢献することを期待していると分析しています。
学習塾の対応:カリキュラム変更と雇用拡大
学習塾は規制を回避するため、カリキュラムを再編したり、隠語を使って宣伝するなど、様々な工夫を凝らしてきました。例えば、数学の講座は「論理的思考」と称して提供されることが一般的です。
大手教育企業TALと新東方教育科技は、今年に入り数千人規模の採用活動を行っており、運営する学校や学習センターの数も回復傾向にあります。両社の株価も上昇していますが、規制前の水準には達していません。
格差拡大の懸念も
一方で、規制緩和による教育格差の拡大を懸念する声も上がっています。上海在住のヤン・ツェンドンさんは、高額な家庭教師を雇うか、親が長時間かけて学習支援をするかの二択を迫られている現状を嘆き、「双減」政策の継続は富裕層とそうでない家庭の間の学力格差をさらに広げると危惧しています。
まとめ:学習塾市場の未来
中国学習塾市場は、規制緩和の波に乗り、新たな局面を迎えています。保護者の需要、政府の政策、そして学習塾の対応が複雑に絡み合い、今後の動向が注目されます。