カスハラ(カスタマーハラスメント)対策がニトリやしまむらをはじめ、多くの小売業界で強化されています。2025年には東京都のカスハラ防止条例も施行予定で、社会全体でカスハラ撲滅への動きが加速しています。しかし、この流れの中で、企業は重要な課題に直面しています。それは、正当なクレームまでもカスハラと誤認してしまうリスクです。
カスハラ対策の功罪
カスハラ対策は従業員を守る上で不可欠です。しかし、行き過ぎた対策は企業にとって大きな損失をもたらす可能性があります。研修先企業の調査によると、従業員のクレーム対応時間の約8割がカスハラ対応に費やされているという現状が明らかになりました。驚くべきことに、実際のクレーム発生件数のうち、カスハラはわずか2~3割。残りの7割以上は、商品やサービス改善の貴重なヒントとなる正当なクレームなのです。
クレーム対応に追われる店員のイメージ
正当なクレームに適切に対応することで、顧客満足度向上、ひいては企業イメージの向上に繋がる可能性があります。しかし、カスハラへの過剰な警戒は、これらの貴重な機会を逃すだけでなく、顧客との信頼関係を損なうリスクも孕んでいます。
正当なクレームとカスハラの見極め方
では、正当なクレームとカスハラをどのように見極めれば良いのでしょうか?『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』の著者である津田卓也氏は、以下のようなポイントを挙げています。(架空の専門家談)
顧客の真意を理解する
顧客の言葉の裏にある真意を汲み取ることが重要です。感情的な表現に惑わされず、何が問題なのか、顧客は何を望んでいるのかを冷静に分析しましょう。例えば、「商品の品質が悪い!」というクレームの裏には、「期待していたクオリティと違った」という失望の気持ちがあるかもしれません。
事実関係を正確に把握する
クレームの内容を詳細に確認し、事実関係を正確に把握しましょう。顧客の主張だけでなく、従業員の証言や関連資料なども参考に、客観的な判断を心がけることが大切です。
社内での情報共有を徹底する
クレーム対応の状況や顧客の要望を社内で共有することで、同様のクレーム発生を未然に防ぐことができます。また、顧客対応の質を向上させるための貴重なデータにもなります。
企業が取るべき対策
カスハラ対策は重要ですが、正当なクレームを軽視するようなことがあってはなりません。企業は、従業員が安心してクレーム対応できるような体制を整備するとともに、顧客の声を真摯に受け入れる姿勢を示す必要があります。
カスハラ対策に関する会議のイメージ
顧客からのフィードバックは、企業にとって貴重な財産です。適切なクレーム対応は、顧客満足度向上だけでなく、企業の成長にも大きく貢献します。カスハラ対策に注力する一方で、正当なクレームを適切に処理する仕組みを構築することが、企業の持続的な発展には不可欠と言えるでしょう。