世界的に電気自動車(BEV)へのシフトが注目される中、近年その勢いに陰りが見られ、一部メーカー(例えばテスラなど)は販売面で苦戦を強いられています。このような状況とは対照的に、中国の自動車大手BYDは、プラグインハイブリッド車(PHEV)の販売を飛躍的に伸ばし、2024年の世界販売台数ではPHEVがBEVを大きく上回る結果となっています。BYDの成功要因の一つとして、PHEV戦略の巧みさが指摘されています。では、日本の自動車市場におけるPHEVの状況はどうなっているのでしょうか?本稿では、信頼できる市場調査データを用いて、日本のPHEV市場の現状とメーカー別シェアに焦点を当てて分析します。
PHEVとは何か?
プラグインハイブリッド車(PHEV)は、一般的なハイブリッド車(HEV)よりも大容量のバッテリーを搭載し、外部からの充電が可能です。電気モーターのみで走行することもでき、短距離なら電気自動車(BEV)のように利用できます。自宅や充電スタンドでバッテリーを充電することで、電力を積極的に活用できる点が大きな特徴です。
自宅で充電されるトヨタのプラグインハイブリッド車
調査データから見る日本のPHEV市場
本稿の分析は、市場調査会社インテージが毎月約70万人から回答を得ている自動車に関する調査「Car-kit®」のデータに基づいています。特に、2020年から2024年までのPHEV新車購入者計1689名を対象としたものです。このデータは、日本のPHEV市場における実際の購買行動を反映していると言えます。
日本国内のPHEV販売シェア:メーカー別動向
2021年から2024年までのメーカー別PHEV販売シェアを見ると、明確な傾向が見て取れます。2022年を除き、トヨタが1位、三菱自動車が2位、レクサスまたは輸入車勢が3位という順序が続いています。
トヨタは近年、日本国内でも人気の高いRAV4、ハリアー、プリウス、クラウン(スポーツ/エステート)、そしてミニバンのアルファード/ヴェルファイアといった主要モデルに積極的にPHEVモデルを追加投入しており、ラインナップを強化しています。
特に2022年に三菱がトヨタを上回ったのは、デザイン、走行性能、そして給電機能なども含めて大幅に改良された2021年12月フルモデルチェンジのアウトランダーPHEVが、多くの消費者に受け入れられ販売台数が増加した影響が大きいと言えます。
全体として、この期間を通じてトヨタと三菱自動車の2社で日本のPHEV市場の7割以上のシェアを占めており、輸入車を含む他のメーカーを大きく引き離している状況です。現在、PHEV乗用車を販売している日本のメーカー(ブランド)は、トヨタ、レクサス、三菱自動車、マツダのみとなっています。
日本のPHEV市場は、世界的なPHEV販売の隆盛(特にBYDのようなメーカーに見られる)とは異なり、国内メーカー、中でもトヨタと三菱自動車が圧倒的なシェアを握っているという特徴が明らかになりました。今後もこの寡占状態が続くのか、あるいは他の国内メーカーや輸入車勢がどのように市場シェアを伸ばしていくのか、注視が必要です。