川の危険性を訴え続ける岡真裕美さん:夫の死を無駄にしないために

茨木市の安威川で起きた痛ましい水難事故。2012年、二人の子供を助けようとして命を落とした岡隆司さん。残された妻、岡真裕美さんは、夫の死を無駄にしないため、川の危険性や事故防止について啓発活動に尽力しています。

12年前の悲劇と向き合い、未来を守る

大阪府茨木市の小学校で、子供たちに語りかける岡真裕美さん。明るい口調ながらも、その言葉には深い悲しみと強い決意が込められています。「川ってめっちゃ怖いから、みんなは簡単に遊びに行ったりしないようにしてください。」 12年前、夫の隆司さんは、安威川で溺れた小中学生を助けようとして自ら川に飛び込みました。小学生は救助されましたが、中学生と隆司さんは帰らぬ人となりました。

安威川の風景安威川の風景

かつて地域住民の憩いの場だった安威川。事故後、当時の茨木市長によって注意喚起の看板が設置されました。しかし、岡さんにとって、看板だけでは十分ではありませんでした。

美談で終わらせない:水難事故の真の教訓を伝える

ジョギングを日課とし、水泳も得意だった隆司さん。なぜこのような事故が起きてしまったのか?岡さんは、メディアの報道に疑問を抱きました。夫の行動は美談として消費され、水難事故防止への意識向上には繋がっていないと感じたのです。

岡真裕美さん岡真裕美さん

「優しい人、正義感の強い人だったと言われることが多いですが、隆司はごく普通のお父さんでした。」と岡さんは語ります。大切な人を失った悲しみを乗り越え、岡さんは水難事故の研究者としての道を歩み始めました。

川の危険性を知り、命を守る行動を

岡さんは、講演や出版活動を通じて、川の危険性や事故防止策、子供の行動特性などについて発信しています。 河川工学の専門家である山田教授(仮名)は、「岡さんの活動は、水難事故防止において非常に重要な役割を果たしている。体験に基づいた訴えは、人々の心に響き、行動変容を促す力を持っている。」と述べています。

2歳と5歳の子どもを遺して亡くなった隆司さん。岡さんは、子供たちの前で泣くまいと必死に涙をこらえました。「自分と同じような思いをする人を一人でも減らしたい。」岡さんの活動は、今もなお続いています。水難事故の危険性を理解し、命を守るための行動を、私たち一人ひとりが考えていく必要があるのではないでしょうか。