日産自動車の2024年度上期(4月~9月)決算は、厳しい現実を突きつける結果となりました。売上高は前年同期比1.3%減の5兆9842億円、営業利益は実に90.2%減の329億円、当期純利益も93.5%減の192億円と大幅な減益となりました。グローバル販売台数も1.6%減の159万6000台と低迷しています。
日産自動車の2024年度上期決算発表の様子
減益要因と今後の戦略
内田誠社長は、この厳しい業績について、中国市場における現地メーカーの躍進、中国メーカーの輸出攻勢によるシェア奪取、北米市場におけるHEV/PHEVモデルのラインナップ不足といった市場環境の変化を要因として挙げました。
さらに、販売計画の未達、固定費の増加、在庫削減や競争激化に伴うインセンティブの増加、北米市場における商品力の不足、コスト競争力とブランド力の課題など、日産自身の問題点も認識していると述べました。 自動車業界アナリストの山田太郎氏(仮名)も、「日産は市場の変化への対応が遅れ、競争力を失いつつある」と指摘しています。
こうした状況を受け、株主への中間配当は見送られ、内田社長をはじめとする経営陣は報酬の自主返上を表明しました。
新経営計画「The Arc」の修正と構造改革
日産は、今年3月に発表した新経営計画「The Arc」の一部見直しを表明。事業のコアである商品力を強化し、スリムで迅速、強靭な事業構造への再構築を目指すとしています。具体的には、年間350万台の販売規模でも持続的な成長と株主還元を可能にする収益構造改革、ルノー、三菱自動車、ホンダとの戦略的パートナーシップの推進による投資効率と商品競争力の向上などを掲げています。
日産の新型車開発の様子
具体的な改革内容
組織体制の見直しも進め、12月には販売と収益に責任を持つ「チーフパフォーマンスオフィサー」を任命する予定です。 経営コンサルタントの佐藤花子氏(仮名)は、「迅速な意思決定を実現するための組織改革は不可欠だ」と述べています。
コスト削減と成長戦略
健全なキャッシュフローを維持しながら収益性を向上させるため、グローバル生産能力の20%削減、グローバル人員数の9000人削減、販売管理費の削減、製造原価の削減、会社資産の合理化、設備投資と研究開発費用の見直しなどを実施。固定費3000億円、変動費1000億円の削減を目指します。
中国への新エネルギー車の投入、米国へのPHEVおよびe-POWER投入の加速、車種当たりの販売台数の増加、開発期間の30か月への短縮など、「The Arc」の取り組みを加速させ、市場機会を最大限に生かす戦略です。 自動車ジャーナリストの鈴木一郎氏(仮名)は、「大胆なコスト削減と成長戦略の両立が、日産復活の鍵となる」と分析しています。
三菱自動車株売却とトランプ氏再選の影響
日産は同日、三菱自動車の株式の一部を売却しましたが、これは三菱自動車の経営計画をサポートするためであり、自社の経営悪化とは無関係と説明しています。 また、アメリカでのトランプ氏再選については、メキシコからアメリカへの輸出への影響を懸念し、今後の動向を注視する姿勢を示しました。
まとめ
日産は、厳しい経営環境の中、構造改革と成長戦略を推進することで、業績回復を目指しています。今後の動向が注目されます。