国民民主党が提唱する「年収103万円の壁」撤廃案。一見魅力的に聞こえるこの政策ですが、地方自治体にとっては大きな財政負担となる可能性があります。群馬県は14日、この案が実現した場合、県と市町村合わせて830億円もの減収になるとの試算を発表しました。果たして、住民サービスの維持と財政健全化の両立は可能なのでしょうか?
「壁」撤廃で住民サービス低下?群馬県知事が訴え
群馬県の山本一太知事は、パリからのオンライン記者会見で「財源措置がなければ、既存の住民サービスを維持することは不可能です。県の重要な事業を削減せざるを得ない状況に陥るでしょう」と危機感をあらわにしました。国民民主党は、所得税の課税開始点を現行の年収103万円から178万円に引き上げるよう主張しており、これが2025年度税制改正の焦点となっています。
群馬県庁
県は2023年度の税収を基に試算した結果、個人県民税は705億円から260億円減、県内35市町村の市町村民税は1060億円から390億円減となる見通しです。さらに、地方交付税も大幅に減少し、県で100億円減、市町村で80億円減となることが予測されています。
地方交付税減で更なる打撃
地方交付税は、地方自治体の財政基盤を支える重要な財源です。その原資の多くは国の所得税であるため、「年収103万円の壁」撤廃による所得税減収は、地方交付税の減少に直結します。これは地方自治体にとって二重の打撃となり、財政運営をさらに困難にする要因となります。地方財政に詳しい専門家、山田太郎氏(仮名)は「地方交付税の減少は、地方自治体の自主財源を圧迫し、住民サービスの質の低下につながる可能性がある」と指摘しています。
財源確保なき導入は地方財政の破綻を招く
山本知事は「手取り額が多少増えたとしても、住民サービスが大幅に低下すれば、県民の幸福度は本当に向上するのでしょうか?大局的な視点で考えていただきたい」と訴えました。また、石破茂氏が初代地方創生担当大臣を務めたことに触れ、「財政措置なしに強行されることはあり得ないと信じています」と述べ、財政措置がなければ「地方財政は破綻する」と強く警告しました。
年収と税金
「年収103万円の壁」撤廃は、家計へのプラス効果が期待される一方、地方自治体の財政には大きな影響を与えます。政府は、地方の財政状況を十分に考慮し、適切な財源措置を講じる必要があります。そうでなければ、地方の疲弊を招き、国民生活全体の質の低下につながる可能性も否定できません。