熊本県のバス・電鉄5社が2024年11月16日、Suicaなどの全国交通系ICカードの利用を終了しました。全国ICからの離脱は初の事例となり、利用者からは戸惑いの声も上がっています。
なぜ全国ICカードが廃止に? 背景と今後の展望
九州産交バス、産交バス、熊本電気鉄道、熊本バス、熊本都市バスの5社は、2016年に全国ICを導入しました。しかし、機器更新にかかる費用負担が大きく、廃止を決定しました。2025年3月には、より安価なクレジットカードなどのタッチ決済を導入予定ですが、それまでの間は現金もしくは地域限定の「くまモンのICカード」のみで決済することになります。
熊本駅前のバス乗り場に掲示された全国交通系ICカード利用終了のお知らせ
利用者の声は? 戸惑いと諦めが交錯
熊本市の桜町バスターミナルには、廃止を知らせる案内が掲示されています。通勤でJRとの乗り継ぎが多いという50代の男性会社員は、「くまモンのカードを作ったが、2枚を使い分けるのは面倒。更新費用が高いのは理解できるが…」と不便さを訴えています。
旅行で熊本を訪れ、空港リムジンバスを利用しようとした東京都の60代女性は、廃止を事前に知らず、現金での支払いを余儀なくされました。「全国ICにチャージしていたが、地域の事情なら仕方ない」と諦めの表情を見せました。
JR熊本駅前でバスを待っていた40代の男性会社員は、「少し昔に戻る感じ」と苦笑い。「くまモンカードを作るメリットも微妙なので、当面は現金で支払う」と話しました。
専門家の見解
交通経済学の専門家である山田教授(仮名)は、「地方の交通事業者にとって、全国ICの維持コストは大きな負担となっている。今回の熊本県の事例は、他の地域にも波及する可能性がある」と指摘しています。
今後の課題と期待
5社の共同経営推進室によると、2023年度の乗客のうち24%にあたる565万人が全国ICを利用していました。同室は「廃止は苦渋の選択」として理解を求めています。
全国交通系ICカード取り扱い停止のお知らせ
クレジットカードなどによるタッチ決済の導入は、利便性の向上につながると期待されます。しかし、全国ICに慣れた利用者にとっては、当面の間、不便を強いられることになります。 地方の交通事業者の経営状況と利用者の利便性。両者のバランスをどのように取っていくのか、今後の動向が注目されます。