日本武道館といえば、1966年のビートルズ来日公演を皮切りに、数々の伝説的な音楽イベントが開催されてきた聖地。近年、この武道館を目指し、熱い視線を送るアーティストたちがいます。それは、中国語圏、いわゆる華流スターたち。彼らが武道館に集結する背景には、一体どんなトレンドが隠されているのでしょうか?
円安とコロナ禍後の往来自由化が公演ブームの火付け役に
2023年10月に李宗盛(ジョナサン・リー)、2024年5月に張惠妹(アーメイ)、10月に周華健(ワーキン・チャウ)と、華流ポップスの重鎮たちが続々と武道館公演を実現しています。これらの公演、実は客席を埋め尽くすのはほとんどが中華系、特に中国本土からの観客。日本在住の中国人だけでなく、公演に合わせてはるばる海を越えて来日するファンも多いというから驚きです。
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この現象の背景には、2つの大きな要因が考えられます。一つはコロナ禍後の海外渡航の自由化。そしてもう一つは、大幅な円安です。円安により、大型コンサート会場のレンタル費用が割安になったことで、主催者側にとって収益性の高いビジネスモデルが確立されました。
音楽業界に精通する評論家、山田一郎氏(仮名)は、「円安は海外アーティストにとって、日本公演を魅力的な選択肢にしています。会場費だけでなく、滞在費なども抑えられるため、ビジネスチャンスが広がっていると言えるでしょう」と指摘しています。
中国人ファンにとっての「お得感」と「近さ」
コンサートチケットの価格帯は1万円~3万円程度。円安によって中国人の中間層以上にとっては割安感があり、さらに観光やショッピングも楽しめるという付加価値も魅力となっています。
中国国内の移動距離を考えると、上海から東京までの直線距離は約1800キロ。これは北京と広州間の距離とほぼ同じです。中国国内でコンサートに行くよりも、東京で公演を見てついでに観光も楽しもうという選択は、理にかなっていると言えるでしょう。人口の多い中国には、こうした消費行動を選択できる層が確実に存在しています。
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今後の華流アーティスト日本公演の展望
周杰倫(ジェイ・チョウ)の横浜アリーナ公演や、林宥嘉(ヨガ・リン)の東京、大阪公演など、若手アーティストの日本進出も活発化しています。円安トレンドが続く限り、今後も華流アーティストの来日公演は増加していくと予想されます。
これらの公演は、日本と中国語圏の文化交流を促進するだけでなく、日本の観光産業にも大きな経済効果をもたらす可能性を秘めています。今後の動向に注目が集まります。