北海道、特に近年はヒグマの出没が深刻化しています。2023年度は、人身被害219名(うち死亡6名)、出没件数2万3669件、駆除頭数1422頭と、過去最多を記録。人とヒグマの共存は、大きな課題となっています。
ヒグマと人、歴史を振り返る攻防
人とヒグマの軋轢は、今に始まったことではありません。明治・大正期の開拓時代にも、札幌丘珠事件、三毛別羆事件、石狩沼田幌新事件など、多くの犠牲者を出した痛ましい事件が起きています。 これは「第一次ヒグマ戦争」とも呼ばれ、当時の人々にとってヒグマはまさに脅威の存在でした。
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戦後の1960年代にも、冷害や十勝岳噴火の影響で山の実りが悪くなり、ヒグマが人里に下りてくるケースが増加。「第二次ヒグマ戦争」と呼ばれるこの時期、1962年には868頭ものヒグマが捕獲されました。野生動物保護の専門家である山田一郎氏(仮名)は、「当時の駆除政策は、ヒグマの個体数減少に大きく影響した」と指摘しています。
保護政策と個体数の増加、そして新たな課題
1990年以降は、ヒグマの保護政策が取られ、雌グマの捕獲制限などが実施されました。その結果、ヒグマの生息数は回復し、2020年度には推定1万1700頭まで増加。分布域も拡大しました。
しかし、個体数の増加は新たな問題を引き起こしました。農作物への被害が増え、市街地への出没も増加。人や家畜が襲われる事件も発生しています。2021年度の人身被害は14件(うち死亡4名)、2023年度の駆除頭数は1422頭と、どちらも過去最高を更新しました。
ゾーニングによる共存への模索
北海道は、ヒグマ管理計画を改訂し、「ゾーニング」による人とヒグマの棲み分けを推進しています。これは、ヒグマの分布域を管理し、市街地への出没を抑制することを目指すものです。
しかし、専門家の間では、ゾーニングの効果について議論が続いています。「ヒグマの行動範囲は広く、単純なゾーニングだけでは効果が限定的だ」という意見も出ています。 佐藤花子氏(仮名・北海道大学環境科学研究科教授)は、「ヒグマの生態を深く理解し、長期的な視点で対策を講じる必要がある」と強調しています。
共存への道、模索は続く
ヒグマとの共存は、容易な課題ではありません。しかし、ヒグマの生態を理解し、適切な対策を講じることで、共存への道を探ることは可能です。 今後、更なる研究と対策が必要とされています。