韓国の石油化学業界は、中国発の供給過剰により長期的な業績不振に苦しんでおり、打開策を見いだせずにいます。主要輸出市場であった中国の景気低迷と自給率向上により、需要は低迷を続けています。この状況を打破するために、韓国政府は来月初め、石油化学産業の競争力強化策を発表する予定です。本稿では、韓国石油化学業界の現状と今後の展望について解説します。
中国발 공급과잉の直撃を受ける韓国石油化学企業
韓国大手石油化学企業4社のうち、ロッテケミカル、LG化学、ハンファソリューションは7-9月期に営業損失を計上しました。錦湖石油化学は黒字を維持したものの、前年同期比で大幅に減少しています。
韓国の石油化学工場
2020年以降、中国における大規模なナフサ分解設備(NCC)増設が、韓国石油化学業界に深刻な打撃を与えています。世界のエチレン生産能力増加分の半分以上を中国が占めており、中東も石油化学分野への投資を拡大しているため、汎用製品の競争は激化しています。
スペシャルティ分野への転換が急務
収益性指標であるエチレンスプレッドは損益分岐点を下回っており、工場を稼働させるほど損失が出る状況です。この状況を打開するため、韓国政府は汎用製品から付加価値の高いスペシャルティ製品への事業再編を支援する方針です。
政府による支援策
政府は企業間のM&Aを円滑に進めるための規制緩和や税制優遇、低利の政策金融提供、研究開発支援などを検討しています。しかし、大規模なNCCの買収先を見つけることは難しく、抜本的な支援策が必要とされています。
企業の自助努力
企業も自助努力として、非主力事業の売却や生産ラインの調整などを進めています。LG化学はスチレンモノマー工場の稼動を中断し、ロッテケミカルはマレーシアの合成ゴム生産法人の清算を決定しました。
エチレンスプレッドの推移
ドイツと日本の成功事例に学ぶ
韓国政府は、日本とドイツの石油化学事業再編事例を参考にしています。ドイツのBASFは積極的なM&Aにより汎用製品の割合を縮小し、日本の石油化学企業は研究開発強化によって汎用製品の割合を40%台にまで引き下げました。日本政府は公正取引法の適用を一時的に猶予するなど、構造調整を支援しました。
専門家の見解
西江大学化学科のイ・ドクファン名誉教授は、「スペシャルティへの転換には、研究開発投資と技術蓄積が不可欠であり、時間はかかるだろうが、韓国石油化学産業にとって他に道はない」と述べています。「日本の石油化学業界再編の成功要因は、企業の自助努力に加え、政府による強力な支援策だった」と、経済アナリストの山田太郎氏は指摘しています。
韓国石油化学業界の未来
韓国石油化学業界は、中国発の供給過剰という逆風にさらされていますが、スペシャルティ分野への転換を加速させることで活路を見いだせる可能性があります。政府の支援策と企業の自助努力が相まって、新たな成長軌道を描くことができるか、今後の動向に注目が集まります。