近年の物価高騰の中、小さな飲食店はどのように赤字を脱却すれば良いのでしょうか?この記事では、飲食店専門の中小企業診断士である難波三郎氏の著書『小さな飲食店のお客が減らない値上げ』(秀和システム)を参考に、人件費に着目した赤字脱却の戦略をご紹介します。
人時売上高で現状を把握する
まず、現状を把握するために「人時売上高」という指標を活用しましょう。人時売上高は「売上 ÷ 総労働時間」で計算されます。総労働時間には、経営者や家族、パート・アルバイトの労働時間が含まれます。つまり、従業員1人が1時間あたりどれだけの売上を生み出しているかを示す指標です。
閑散とした時間帯の対策
例えば、ランチタイムが比較的空いている場合、人時売上高は低いはずです。一時的な状況であれば様子見も可能ですが、赤字が続くようであれば人員配置の見直しが必要です。「人員を減らすと運営できない」という考えではなく、「減らした人数で売上を維持するにはどうすれば良いか?」と発想を転換してみましょう。例えば、水やライスのおかわりをセルフサービスにする、メニュー数を絞る、提供商品を見直すなど、様々な工夫が可能です。
セルフサービスのウォーターサーバー
ピーク時の効率化
反対に、ピーク時にウェイティングが発生するほど忙しいお店では、人員配置の最適化が課題となります。お客様をお待たせすることなく、スムーズなオペレーションを実現するために、注文システムの導入や調理工程の効率化などを検討しましょう。
1人運営で成功する秘訣
難波氏のセミナーでは、1人で飲食店を運営したいという参加者も少なくありません。1人運営で月商100万円を超える成功パターンは、大きく分けて2つあります。1つは、たこ焼きやケバブなど単品商売のお店。同じ作業の繰り返しなので生産性が高いのが特徴です。もう1つは、仕込みに時間はかかるものの、提供時間は短いバルやオーブン料理のお店です。オーダーを受けてから調理する工程の負担が少ないため、少人数運営が可能です。
具体的な人件費削減策
キッチン業務を「ルーティン化」に近づける、オーダーを受けてから調理する工程の負担を減らす、ホール業務をセルフサービス化する。これらは人件費削減のヒントになります。人件費削減は利益に直結するため、場合によっては値上げよりも効果的です。
メニュー構成の見直し
提供するメニュー数を絞り込むことで、仕込みや調理の手間を減らすことができます。また、人気メニューに絞り込むことで、食材のロスを減らす効果も期待できます。
テイクアウト・デリバリーの導入
テイクアウトやデリバリーを導入することで、ホールスタッフの人件費を削減できます。また、客席数を減らすことも可能になるため、家賃などの固定費削減にも繋がります。
まとめ
人件費の最適化は、飲食店経営において重要な課題です。人時売上高を指標に現状を把握し、具体的な削減策を実行することで、赤字脱却を目指しましょう。小さな工夫の積み重ねが、大きな成果に繋がります。ぜひ、この記事を参考に、あなたのお店に合った戦略を立ててみてください。