コロナ禍が終わって鉄道利用者が増えても、物価高騰などの影響を強く受ける鉄道業界。近年は、バリアフリー対応やホームドア設置など、利便性や安全に対する投資も必要になってきた。また、従業員の給与も上昇させなければならない。
そうなると、運賃・料金を値上げするしか解決策はない。運賃の値上げは、所轄官庁の認可が必要である。
これまでさまざまな鉄道会社が値上げをしてきた。そんな中で、消費税増税時以外値上げをしてこなかったのが、JR東日本である。
しかし、JR東日本は2024年12月6日、運賃改定の申請を国土交通大臣に対して行ったと発表した。改定の発表内容を見ると、かなり気になるものである。
■首都圏の運賃が高くなる
今回の運賃改定では、東京圏にある「電車特定区間」「山手線内」の運賃区分を、「幹線」に統合する。一部区間で交通系ICカードよりも紙のきっぷのほうが安いところがあったが、それをやめ同額か、交通系ICカードのほうが安いようにする。
「幹線」とは、国鉄末期の1981年に国鉄の路線を2種類に分け、その際の過去の輸送実績に基づいて分けた区分で、主要な路線として位置付けられたものである。JR移行後に新設された路線は、輸送予測で「幹線」かどうかを決めた。そうではない路線を「地方交通線」と呼ぶ。
さらに、「幹線」「地方交通線」の運賃を値上げする。普通旅客運賃と、通勤定期旅客運賃を値上げし、6か月の通勤定期旅客運賃の割引率を見直すというものだ。通学定期旅客運賃は据え置くという(ただし首都圏の電車特定区間は「幹線」の料金となる)。
普通運賃の改定率は幹線が4.4%、地方交通線が5.2%、通勤定期は幹線が7.2%、地方交通線は10.1%である。この両者では通学定期の運賃改定はない。
普通運賃よりも通勤定期のほうが値上げ率は高く、定期券の割安さが薄らいでいる。
だが「電車特定区間」「山手線内」が幹線に統合される影響は、非常に大きなものとなっている。普通運賃の改定率は電車特定区間で10.4%、山手線内で16.4%、通勤定期は電車特定区間が13.3%、山手線内は22.9%、通学定期は電車特定区間で8.0%、山手線内で16.8%。都心に近ければ近いほど値上げ率が高く、通勤定期の値上げはすごいことになっている。
「電車特定区間」「山手線内」の値上げ状況を詳しく見てみよう。