「クマは“獲る”のではなく“授かる”もの」秋田の狩猟集団「阿仁マタギ」の流儀…漫画『ゴールデンカムイ』でも話題


【画像】クジラ級の巨大クマに遭遇したことも…

クジラ級の巨大クマに遭遇、顔面叩かれる事故も…

「ようやく雪が積もってクマの足跡がわかるようになりました。ベテランマタギたちも『早く山さ行こ』と満面の笑みです」(益田さん、以下同)

マタギの猟には集団で行う「巻き狩り」と、単独ないしは数名で行う「忍び」がある。巻き狩りでは勢子(せこ)が声を出しながらクマを追い立て、山の上で待ち構えているマツバが銃を撃つ。移住からほどなく、益田さんにもクマを仕留める機会が訪れた。

「僕はもっぱら勢子なんですが、この日はマツバをやってみろと、一番いい位置につけてもらったんです。そうしたらクジラみたいに大きなクマが飛び出してきて…!でもそれは逃してしまい、2頭目に出てきたのを授かりました。もう夢中でしたよ。失敗したら全員の1日を棒に振ってしまうわけですから。役目を果たせたという安堵感が強かったです」

クマを獲ることを、マタギは「授かる」と言う。足跡などの痕跡を探して尾根や谷底、ときには沢の中を進む。

「一度、沢沿いの斜面を40mも滑落したことがあります。途中でつかまって奇跡的に無傷だったんですが、もう少し落ちていたら岩場だった。近年は阿仁マタギの事故はありませんが、昔はクマに顔を叩かれたりしたこともあったそうです。

僕は山が怖くないと思ったことは一度もありません。今日だって心臓バックバクでしたよ。足跡が新しくなるにつれて、緊張感、恐怖、高揚感、期待…いろいろな感情がせめぎ合います。

獲ったクマはケボカイという儀式で魂を山に返してから解体します。初めての解体は、どうすれば上手くできるか、という気持ちだけでした。命をいただく現場に初めて触れて狩猟に興味をもったという話もよく聞きますが、僕は『別に肉が欲しければスーパーで買えばいいじゃん』と思っている方ですから(笑)」

そう話す益田さんには、マタギを特別に神聖視するような気負いはなく、若い世代らしい合理的な考え方が伝わってくる。



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