日産自動車が2024年度中間決算で9000人もの人員削減を発表するという衝撃的なニュースが駆け巡りました。純利益は前年同期比93.5%減の192億円。一体何が日産をここまで追い込んだのでしょうか? 本記事では、日産の現状分析と復活への道筋を探ります。
北米市場での苦戦、EV戦略の誤算
日産の業績悪化の最大の要因は、北米市場における販売不振です。かつてグループ全体の営業利益の7割超を支えていた北米市場は、今や41億円の赤字を抱えています。この急激な業績悪化の背景には、次世代自動車戦略の誤算が潜んでいます。
近年、北米の自動車市場ではEV一辺倒だった流れからHVへの回帰が見られます。EVの高価格化、補助金制度の打ち切り、充電インフラの未整備、そして冬季の航続距離の低下などが、消費者のEV離れを加速させました。
北米のEV充電スタンド
日産は、カルロス・ゴーン元CEO時代からEVに注力してきましたが、このHVへのシフトに対応できず、大きな痛手を負いました。自動車評論家の山田一郎氏(仮名)は、「日産はEV市場の成長を過大評価し、HVへの投資を怠った。市場の変化を読み誤ったことが、現在の苦境を招いたと言えるだろう」と指摘しています。
コロナ禍での好機を逃した日産
コロナ禍による半導体不足は、自動車メーカーにとって皮肉にも販売価格を高騰させ、収益を向上させるチャンスでした。トヨタやスバルは、この機会を捉えて新車投入やモデルチェンジを積極的に行い、業績を伸ばしました。
しかし、日産はゴーン時代からの拡大路線の修正計画「Nissan NEXT」に固執し、生産能力と販売車種の削減を進めていました。このため、新車開発のスピードが鈍化し、市場のニーズに応えることができませんでした。
日産の業績発表会
結果として、人気車種の不在、不人気車種の在庫増加、販売奨励金頼みの販売戦略など、負のスパイラルに陥りました。自動車ジャーナリストの佐藤花子氏(仮名)は、「日産はコロナ禍という好機を逃しただけでなく、戦略の柔軟性を欠き、市場の変化に迅速に対応できなかった」と分析しています。
復活への道筋、そして未来へ
日産の復活には、市場のニーズを的確に捉えた商品開発、生産体制の効率化、そしてブランドイメージの向上など、多岐にわたる改革が必要です。HV市場への本格参入、EV戦略の見直し、そして革新的な技術開発など、具体的な施策を迅速に実行することが求められます。
9000人もの人員削減は、日産にとって苦渋の決断だったでしょう。しかし、この痛みを伴う改革を乗り越え、新たな時代を切り開くことができるのか。日産の未来は、まさに正念場を迎えています。