海上自衛隊の輸送能力向上に大きく貢献する新型輸送艦「ようこう」の命名・進水式が、2024年11月28日、広島県尾道市の内海造船瀬戸田工場にて盛大に執り行われました。陸上自衛隊が式典を主催した背景には、今後の運用計画が深く関わっています。
新型輸送艦「ようこう」の性能と役割
「ようこう」は、従来「中型級船舶」と呼ばれていた艦艇の1番艦として、全長約120m、喫水約4m、基準排水量約3500トンという堂々たる船体を誇ります。乗員は約40名で、千数百トンの輸送能力を有し、車両数十両または20フィートコンテナ数十個もの積載が可能です。最高速度は15ノット(約28.8km/h)以上。船首と船尾には、民間フェリーのように「ランプウェイ」と呼ばれる起倒式のスロープが備えられており、岸壁への接岸時に車両や物資を迅速かつ効率的に積み下ろしできます。
2024年11月28日、命名・進水した新型輸送艦「ようこう」。
「ようこう」は、ビーチング能力(砂浜などへの直接上陸能力)を持つ「にほんばれ」型輸送艦とは異なり、港湾施設を利用した輸送に特化しています。この設計により、「にほんばれ」型に比べて、より多くの車両、コンテナ、資機材を一度に輸送することが可能となります。軍事専門家である佐藤一郎氏(仮名)は、「ようこう」の登場により、自衛隊の輸送能力は格段に向上し、迅速な部隊展開が可能になるだろうと分析しています。
海上輸送群(仮称)の新設と「ようこう」の配備
「ようこう」は、2024年度末に海上自衛隊呉基地に新設される「自衛隊海上輸送群(仮称)」への配備が予定されています。この部隊は、陸海空自衛隊の共同部隊として運用される計画であり、島嶼部への部隊展開や災害派遣など、様々な任務において重要な役割を担うことが期待されています。
注目すべきは、陸上自衛官が主体となって「ようこう」をはじめとする各種船舶の操艦・運用にあたる点です。これは、陸海空の統合運用を強化する自衛隊の新たな取り組みを象徴するものと言えるでしょう。防衛アナリストの田中花子氏(仮名)は、この共同運用体制により、より効率的かつ柔軟な輸送作戦が可能になると予測しています。
今後の海上輸送力強化計画
防衛省は、海上輸送群(仮称)の充実に向け、「ようこう」の同型艦をさらに1隻、ビーチング能力を持つ「にほんばれ」の同型艦を3隻、小型の機動舟艇を4隻建造する計画を進めています。これにより、2027年度末までに計10隻の輸送艦艇が配備される予定です。
これらの新型輸送艦・舟艇の導入は、島嶼防衛における輸送力強化のみならず、大規模災害発生時の迅速な救援活動にも大きく貢献すると期待されています。
まとめ
「ようこう」の進水は、日本の防衛力強化における重要な一歩です。海上輸送力の向上は、島嶼防衛や災害派遣など、多様な任務への対応能力を飛躍的に高めるでしょう。今後の自衛隊の活動に、大きな期待が寄せられています。