近年、食卓を彩る食材の中でも、身近なたこが驚くほどの価格高騰に見舞われています。庶民の味方、たこ焼きも例外ではなく、この先気軽に食べられなくなる日が来るかもしれません。一体何が起きているのでしょうか?この記事では、たこ値上がりの原因を探り、その深刻な現実と未来について迫ります。
たこ焼き激戦区として知られる東京・葛飾区。15年間、地域住民に愛され続ける老舗「たこ焼き 長尾」では、大ぶりのたこを惜しみなく使い、注文を受けてから焼き上げるこだわりのたこ焼きを提供しています。6個入り562円の看板メニューは、長年変わらぬ価格で親しまれてきました。しかし、長尾誠司店主は、たこの仕入れ値の高騰に頭を悩ませています。「昔は100キロ10万円以下だったのに、今は2.2倍の22~23万円もするんです」。
たこ焼き屋さんの店主
たこの価格は年々上昇し、2024年11月の東京都区部における小売価格は、100グラムあたり534円と、高級魚として知られるマグロの519円を上回る事態となっています。「本当に厳しい。いつまで店を続けられるか不安です」と長尾店主は深刻な表情で語ります。
たことマグロの価格比較
たこ不足の深刻な原因とは?
国内のたこ漁獲量だけでは需要を満たすことができず、日本は大量のたこを輸入に頼っています。茨城県神栖市にある水産加工会社「津久勝」は、1日に5トン以上のたこを加工し、大手スーパーなどに卸しています。同社の津久浦裕之社長は、「30年間たこを扱ってきたが、こんな高値は初めてだ」と unprecedented な状況を説明します。
日本は年間約3万トンのたこを輸入しており、その約4割は西アフリカのモーリタニア産です。しかし、「近年、スペインが大量に買い付けているため、日本は買い負けている状態が続いている」と津久浦社長は指摘します。
モーリタニアからのたこ輸入
スペイン料理をはじめ、世界的にたこ人気が高まっていることに加え、円安もコスト上昇に拍車をかけています。モーリタニア産たこの輸入単価は、2023年には1キロあたり1392円と、10年前から5割も上昇しました。
さらに、かつては「デビルフィッシュ(悪魔の魚)」と呼ばれ、敬遠されていたアメリカでも、たこ消費が増加しています。「中南米からの移民増加に伴い、たこを食べる習慣が根付いている」と津久浦社長は分析します。これらの要因から、たこ価格の大幅な下落は期待薄と見られています。
世界的な需要増加、円安、そして新たな市場の出現。これらの複合的な要因が、たこ不足、ひいては価格高騰の深刻な原因となっています。この状況は、私たちの食卓に大きな影響を及ぼす可能性があり、今後の動向に注目が必要です。