ホンダ、EV戦略の転換点?脱エンジン目標と市場の現実

ホンダは2040年の「脱エンジン」を宣言し、電気自動車(EV)市場への本格参入を進めています。しかし、世界的なEV普及の減速や北米市場におけるガソリン車需要の底堅さを受け、戦略の見直しを迫られているようです。 果たして、ホンダのEV戦略はどのような転換点を迎えているのでしょうか?

EVシフトの遅れ?揺らぐ「2040年脱エンジン」計画

ホンダは当初、アコード、シビック、CR-Vなどの主力エンジン車種を2025年から2034年にかけて順次廃止する計画を立てていました。しかし、市場の動向変化を受け、一部車種の廃止計画の延期を決定した模様です。関係者によると、三部敏宏社長はEV化を加速させたい意向でしたが、現場からの強い反対に遭い、計画修正を余儀なくされたとのことです。

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2040年の脱エンジン宣言は、社内外への危機意識の表れでもありました。しかし、世界的なEV普及の減速、特に北米市場におけるハイブリッド車(HV)を含むガソリン車需要の底堅さが、ホンダのEV戦略に影響を与えていることは明らかです。欧米の競合他社もEVシフト計画の修正を相次いで発表しており、ホンダも「2040年」の目標は維持しつつも、現実的な対応を迫られています。自動車評論家の山田一郎氏(仮名)は、「市場の動向を的確に捉え、柔軟な戦略修正を行うことが、今後のホンダの成長に不可欠だ」と指摘しています。

ホンダのEV、北米市場での滑り出しは?

ホンダは2024年3月、初の量産EV「プロローグ」と高級車ブランド「アキュラ」初のEV「ZDX」を北米市場に投入しました。どちらもGMとLGエナジーソリューションが共同開発したEV向け電池「アルティウム」を搭載しています。

10月末までの販売台数は、プロローグが1万8310台、ZDXが4229台。10月単月ではプロローグが4138台で北米EVランキング7位、ZDXは1218台で同22位と、まずまずのスタートを切りました。 プロローグには、1万ドルのインセンティブが設定されており、販売促進に繋がっている可能性があります。

新技術導入で巻き返しなるか?

ホンダは、EV生産における競争力強化のため、アルミ鋳造設備「メガキャスト」の導入を計画しています。この技術により、車体部品の製造コスト削減と生産効率向上が期待されます。

【写真】ホンダが導入予定のアルミ鋳造設備「メガキャスト」で製造された車体部品

競争の激しいEV市場において、ホンダは技術革新と柔軟な戦略によって生き残りを図ろうとしています。 10月に開催された技術説明会で、三部社長は「BYDやテスラに対抗するためには、既存の価値観の延長線上にはない新しい価値をつくらなければならない」と強調しました。今後のホンダのEV戦略に注目が集まります。