大阪参院選、維新の試練と新興勢力の躍進:終盤の激戦

参議院選挙の投開票(20日)まで残り1週間となりました。改選数4議席を巡り19人が立候補する大阪選挙区は、全国でも屈指の激戦地です。大阪・関西万博の開催期間中に実施される今回の参院選で、特に大阪に強固な地盤を築いてきた日本維新の会が、新たな勢力からの挑戦を受け、かつてない混戦模様を呈しています。本稿では、選挙戦終盤における維新の戦いぶりと、大阪の選挙情勢に起きている「異変」、そしてその背景を分析します。

維新が万博アピールを「封印」する理由

公示日の3日、日本維新の会の聖地ともいえる大阪・なんばでの第一声。吉村洋文代表は、大阪・関西万博の会場となる夢洲に触れ、「多くの人でにぎわっている」「様々な改革は、大阪の皆さんに支えられて実現できた」と述べました。しかし、25分近い演説での万博登場はわずか2回。7月に入り連日大勢の来場客でにぎわい、黒字化も見えてきた万博は、維新が主導してきた一大事業であり、絶好のアピール材料であるはずです。全国各地の街頭演説でも、吉村氏が万博の実績に多くの時間を割かないのは、「政治利用との批判をされるのはまずい」という党内の強い警戒感があるためです。ある維新関係者は、万博の盛況が党勢拡大の「追い風効果」になるはずだと期待する一方、批判を招くリスクを冒したくないという慎重な判断が働いていることを示唆しています。

参院選の街頭演説に集まる大阪の有権者たち参院選の街頭演説に集まる大阪の有権者たち

維新の牙城に迫る新興勢力と「大混戦」

維新は本拠地である大阪で、2016年以降の参院選では毎回2人の候補者を擁立し、いずれも当選させてきました。大阪以外の地域での退潮傾向が目立つ中で、この大阪選挙区で再び「2議席」を死守できるかどうかが、維新の今後の党勢を左右すると言っても過言ではありません。選挙戦が終盤に入り、改選4議席を長年分け合ってきた自民党、公明党、そして維新2人の「定位置」を巡る争いに、様々な新興勢力が入り乱れる「大混戦」の様相を呈しています。中でも、既存政党が最も警戒感を強めているのが、急速に勢いを増す参政党です。参政党の神谷宗幣代表は公示後すぐに大阪入りし、維新の聖地・なんばで「参政党のルーツは大阪だ」と声を張り上げ、集まった多数の聴衆による熱気は維新の第一声とは明らかに異なると評されています。さらに、国民民主党の玉木雄一郎代表、れいわ新選組の山本太郎代表、日本保守党の百田尚樹代表ら各党党首も続々と大阪入りし、激戦に拍車をかけています。

「改革政党」から「既存政党」へ?維新の立ち位置の変化

維新は、特定の団体や既存の政治家との「しがらみのない改革政党」であることを大きな武器として、広く有権者の「ふわっとした民意」に支えられて勝利を重ねてきました。しかし現在、大阪においては既に盤石な支持基盤を築き、新興勢力ではなく「既存政党」と見なす有権者も出てきています。吉村代表は、クリーンで改革志向の政党であることを懸命にアピールしていますが、ある維新関係者は「うちも既存政党と見られている」と述べ、支持層や有権者の認識の変化に対する強い危機感をにじませています。これは、維新が大阪で政治的な影響力を確立し成熟したことの裏返しとも言えますが、同時にかつてのような躍進を続けられるかどうかの試金石ともなっています。

大阪に起きる「地殻変動」の可能性

今回の大阪選挙区の情勢は、必勝を期す公明党、政権批判票の受け皿になることを目指す立憲民主党、国民民主党、共産党、れいわ新選組といった野党各党、そして参政党をはじめとする新興勢力が入り乱れ、非常に予測が難しい「大荒れ」となる可能性も指摘されています。自民党関係者からも「大荒れになるかもしれない」との声が聞かれるなど、日本維新の会創業の地で起きている「地殻変動」が、今後の日本の政治地図にどのような影響を与えるのか、全国的な注目が集まっています。

参考:ヤフーニュース/日刊スポーツ記事