現代の職場で部下育成に悩むマネジャーは少なくありません。「パワハラを恐れ部下と距離を置く」「部下の考えが分からない」といった声も聞かれます。働き方改革やコンプライアンス重視が進む中、対話の場である1on1が注目されています。『増補改訂版 ヤフーの1on1』著者推奨の専門家、永田正樹氏の視点から、効果的な部下育成につながる上司の関わり方を探ります。
経験からの学びは「やりっぱなし」ではダメ
「人は経験から学ぶ」は真実ですが、多くの経験が「やりっぱなし」で終わっていませんか。会議の失敗や指示が伝わらない経験も、「まあ、次は頑張ろう」と流しがちです。問題は失敗自体より、経験が言語化されず、学びとして定着しないこと。これを防ぐ仕組みが必要です。
経験学習のプロセスを示す図。コルブモデルを基にした内省を通じた学びの循環を表す
1on1が促す内省の重要性
経験を学びへ昇華させる鍵が1on1です。定期的な一対一の対話は、自身の行動を振り返る内省の時間を提供します。この内省プロセスにより、経験は教訓へと変わる。これを支援するのが「考えさせるコーチング」です。
「アドバイス」と「考えさせるコーチング」の違い
管理職はアドバイス=指導と思いがちですが、コーチングは違います。それは部下自身が深く考え、解決策を自ら見つけ出すよう促すプロセス。一方的な答えではなく、部下に気づきを促すことが、効果的なコーチングの真髄です。
具体例:クライアント対応の悩みへのコーチング
部下がクライアント対応に悩む例。安易な「次はこうした方がいい」というアドバイスではなく、「あの時、具体的に何が?」「うまくいかなかった理由は?」と問いかけます。この対話が部下の内省を深め、行動や思考の質を変えるのです。これが1on1による経験学習支援です。
経験を学びに変え、部下の成長を促すには、1on1における内省支援としての考えさせるコーチングが不可欠です。上司が答えを与えるのではなく、部下が自ら考え、気づくプロセスを導くこと。これが現代の効果的な部下育成の鍵となります。
参照:Yahoo!ニュース (ダイヤモンド・オンライン掲載記事より)