この記事では、中学受験を親の意向で決めてしまったことで苦悩した大学生の事例を通して、子供自身の意思を尊重した進路選択の重要性について考えます。千葉県在住の田代賢雄さん(仮名)の経験は、私たちに多くの示唆を与えてくれます。
母親の期待と中学受験への道
田代賢雄さんは、小学校時代は常に優秀な成績を収めていました。テストでは満点を取り、勉強で困ることはなかったといいます。そんな賢雄さんの才能を伸ばしたいと考えた母親の律子さん(仮名)は、小学3年生の賢雄さんに中学受験を勧めます。賢雄さん自身は中学受験についてよく理解しないまま、母親の言葉に従って塾に通い始めました。
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賢雄さんの住む地域では中学受験をする子供は少なく、周囲の友達も中学受験を話題にすることはありませんでした。母親から「中学受験をしておけば、高校受験をしなくて済むから楽だよ」と言われた賢雄さんは、特に疑問を持つこともなく入塾を決意します。
塾での苦悩と転塾
賢雄さんが最初に入塾したのは栄光ゼミナールでした。家からの近さと授業時間の短さが決め手となりました。当初は学校の宿題と塾の宿題を両立していましたが、4年生になると塾の授業についていくのが難しくなり始めます。塾の宿題が終わらない、前の席の女の子からのちょっかいなど、様々な要因が重なり、賢雄さんは塾での勉強に苦痛を感じるようになります。
母親には女の子のことは話さず、「塾の授業についていけないから塾を替えたい」とだけ伝えました。律子さんは息子の意見を尊重し、すぐに新しい塾を探してくれます。5年生になるタイミングで個人経営の塾に転塾しました。新しい塾は家から遠く、電車で6駅、そこから徒歩10分という道のりでしたが、賢雄さんにとっては苦ではありませんでした。しかし、問題は成績でした。
成績の低迷とプレッシャー
新しい塾でも成績は伸び悩み、賢雄さんは次第に自信を失っていきます。中学受験に対するプレッシャーは増し、勉強への意欲も低下していきました。「料理研究家A氏」は、著書『子供と学ぶ喜び』の中で、「子供にとって、勉強は楽しいものでなければならない。プレッシャーの中で学ぶことは、子供の成長を阻害する可能性がある」と述べています。賢雄さんの状況はまさにこの言葉通りでした。
中学受験の結果とその後
賢雄さんは第一志望校には合格できませんでしたが、第二志望の中学校に進学しました。しかし、中学入学後も勉強への苦手意識は消えず、高校受験でも苦労することになります。
自分らしい進路選択の重要性
賢雄さんの経験は、親の期待に応えようとするあまり、自分自身の意思を置き去りにしてしまうことの危険性を示しています。子供にとって、進路は自分自身で選び、責任を持つことが大切です。「教育コンサルタントB氏」は、「子供には、自分の興味や才能に合った進路を選択する自由を与えるべきだ。親は、子供の選択を尊重し、サポートする役割に努めるべきである」と強調しています。
まとめ
田代賢雄さんの事例は、中学受験を取り巻く様々な問題を浮き彫りにしています。親の期待に応えたいという気持ちは大切ですが、それ以上に子供自身の意思を尊重することが重要です。この記事が、子供たちの進路選択について考えるきっかけになれば幸いです。