日本の医療現場に新たな希望が舞い降りた。一刻を争う重症患者の搬送を可能にする「ドクタージェット」の運航が、愛知県営名古屋空港を拠点に開始された。特に小児医療における地域格差の解消に大きな期待が寄せられている一方で、高額な費用が課題となっている。本記事では、ドクタージェットの現状と可能性、そしてその費用面における課題について深く掘り下げていく。
ドクタージェットとは?その役割とメリット
ドクタージェットは、数人乗りのビジネスジェットを改造し、ストレッチャーや医療機器を搭載したものだ。患者と共に医療スタッフが同乗し、移動中も継続的な治療を行うことができる。心電図、呼吸数、脈拍数、酸素飽和度などのモニターを装着し、患者の状態をリアルタイムで監視しながら、適切な処置を施すことが可能だ。
0歳児の心臓病搬送の様子
ドクタージェットの導入は、小児医療における地域格差の解消を目的としたものだ。心臓病などの重症患者の搬送に活用されており、既に日本列島を横断するケースを含む多くの患者の命を繋いできた。
ドクタージェット機内の様子
あいち小児保健医療総合センターの伊藤友弥医師は、「小児集中治療室(PICU)は太平洋側に集中しており、地域によって治療格差が生じる可能性がある。ドクタージェットのような迅速な搬送手段は、この格差を埋めるために不可欠」と語る。
ドクターヘリとの違い、そしてドクタージェットの優位性
従来の空の救急搬送の主流はドクターヘリだったが、航続距離は約75km圏内と限られていた。一方、ドクタージェットは航続距離約2000kmと日本列島をほぼカバーできるため、地方から都市部のPICUへの搬送が可能となった。
ドクタージェット機内の医療機器
また、時速760km/hというドクターヘリの約3倍の速度に加え、夜間や悪天候でも飛行できるというメリットも大きい。
PICU不足の現状とドクタージェットの貢献
国内のPICUは35カ所と少なく、そのほとんどが東京や大阪などの大都市圏に集中している。地方ではPICUが不足しており、重症患者の搬送が困難なケースも多い。
あいち小児保健医療総合センターの伊藤医師
ドクタージェットは、このようなPICU不足の現状を改善し、地方の重症患者にも高度な医療を提供する可能性を秘めている。
ドクターヘリとドクタージェットの比較
高額な費用という壁、そして今後の展望
ドクタージェットの運航には、1回あたり250~300万円という高額な費用がかかる。この費用負担が大きな課題となっており、誰もが利用できる体制の構築が急務となっている。
小児医療の専門家である山田先生(仮名)は、「ドクタージェットは子どもの命を救うための重要な手段だが、費用がネックとなって利用できないケースも少なくない。費用負担の軽減策を早急に検討する必要がある」と指摘する。
ドクタージェットは、日本の医療の未来を担う重要な存在だ。費用面の課題を克服し、より多くの子どもの命を救うために、さらなる発展が期待される。