JR九州、クイーンビートル運航再開を断念 博多-釜山航路から撤退へ

JR九州の完全子会社であるJR九州高速船が運航していた博多港と韓国・釜山港を結ぶ高速旅客船「クイーンビートル」の運航再開が断念されることが分かりました。度重なる浸水事故と隠蔽工作により失われた信頼回復は困難と判断され、1991年の開設以来の歴史を持つ日韓航路からの撤退となります。正式な決定は月内にも行われる見込みです。

浸水事故と隠蔽工作、信頼回復叶わず

2022年11月に就航したクイーンビートルは、2023年2月に船体内部の浸水事故が発生。国土交通省への報告を怠り数日間運航を続けた結果、行政処分を受けました。しかし、問題はこれで終わりませんでした。2024年2月から5月にかけても浸水が発生していたにも関わらず、航海日誌への虚偽記載や浸水警報センサーの不正操作など、組織的な隠蔽工作が行われていたことが、国土交通省の抜き打ち監査で発覚。運休を余儀なくされました。

クイーンビートルクイーンビートル

国土交通省は、全国で初めて安全統括管理者と運航管理者の解任命令を発出。JR九州とJR九州高速船も、隠蔽工作に関与した当時の社長と両管理者の3人を懲戒解雇処分としました。さらに、JR九州が設置した第三者委員会は、同社の企業統治(ガバナンス)の不備を指摘する調査報告書を提出。海上保安庁も船舶安全法違反などの容疑で捜査を進めています。

JR九州社長、苦渋の決断

JR九州の古宮洋二社長は、問題発覚後も運航再開への強い意欲を示していました。しかし、度重なる浸水事故と組織的な隠蔽工作により失われた信頼の回復は困難と判断。苦渋の決断として、日韓航路からの撤退を決断したとみられます。

釜山との海の架け橋、歴史に幕

クイーンビートルは、博多と釜山を結ぶ重要な交通手段として、多くのビジネスマンや観光客に利用されてきました。今回の撤退は、日韓交流に大きな影響を与えることが懸念されます。

釜山港に停泊するクイーンビートル釜山港に停泊するクイーンビートル

この撤退劇は、企業のコンプライアンスや安全管理の重要性を改めて問うものとなっています。 今後の動向に注目が集まります。