中国美容整形ブームの光と影:高まる「顔値」への意識と規制強化の現状

中国では、美への意識の高まりとともに美容整形がブームとなっています。就職活動や職場での競争を有利に進めるために、美容整形を受ける若者が急増しているのです。「顔値(顔面偏差値)」という言葉が定着し、容姿が社会的な成功に繋がるという認識が広まっている現状があります。

美容整形市場の急拡大と若者の意識変化

ここ10年で、中国の美容整形市場は飛躍的に拡大しました。中国衛生当局の統計によると、美容整形の医療機関の診療者数は2013年の約170万人から2022年には約1250万人へと大幅に増加しています。30代の女性会社員は、年間約40万円を美容整形に費やしており、「友人の中には年間100万円使う人もいる」と話しています。彼女のように、高額な費用をかけてでも美容整形に投資する若者が増えているのです。この背景には、激しい競争社会の中で、少しでも有利な立場に立ちたいという若者たちの切実な思いが垣間見えます。

中国の美容診療を紹介する画像を示す、電子商取引大手勤務の女性=11月、北京(共同)中国の美容診療を紹介する画像を示す、電子商取引大手勤務の女性=11月、北京(共同)

医療事故の増加と当局の対応

美容整形市場の急拡大に伴い、医療機関が乱立し、医療事故も深刻化しています。中国メディアによると、2019年には後遺症や死亡事故が10万件近く発生したと報告されています。こうした状況を受け、当局は無資格で手術を行う診療所への摘発を強化するなど、規制を強めています。美容外科医の李氏(仮名)は、「無資格の医師による施術は非常に危険であり、命に関わることもある。必ず資格を持った医師のいる信頼できる医療機関を選ぶべきだ」と警鐘を鳴らしています。

消費者の安全を守るための取り組み

中国消費者協会は、安易な美容整形に走らないよう注意喚起を行っています。美容整形はあくまで医療行為であり、リスクを伴うことを理解した上で、慎重に判断する必要があると強調しています。また、信頼できる情報源から適切な情報を入手し、自分に合った施術方法を選ぶことが重要です。

美容整形ブームの未来

中国の美容整形ブームは、今後も継続すると予想されます。しかし、医療事故の増加や倫理的な問題など、解決すべき課題も山積しています。より安全で安心な美容整形を実現するためには、医療機関の質の向上、消費者への適切な情報提供、そして法規制の整備など、多方面からの取り組みが不可欠です。

中国の美容整形市場は、まさに光と影が入り混じった状況と言えるでしょう。美への追求は個人の自由ですが、健康や安全を最優先にすることが何よりも重要です。