日産自動車が苦境に立たされている。2024年度上半期決算では、営業利益と最終利益が共に前年比90%超の大幅減益となり、3月に発表したばかりの中期経営計画の撤回、9000人規模のリストラを含む構造改革を発表する事態にまで発展した。一体なぜ、日産はここまで落ち込んでしまったのだろうか?この記事では、その真相に迫る。
米国市場の激変と日産の苦悩
自動車業界全体が転換期を迎えている。2024年度上半期決算では、完成車7社合計の営業利益が前年比6%減の3兆9905億円に落ち込んだ。背景には、米国市場における競争激化に伴う販売奨励金(インセンティブ)の増加がある。トヨタやホンダも巨額の費用を計上する中、日産は特に深刻な打撃を受けている。
日産ローグ(北米市場の主力モデル、日産ローグ)
1Q(4~6月期)は7社合計で前年比13%増益だったものの、2Q(7~9月期)は19%減益へと転じた。8四半期連続の増益記録が途絶え、市場の大きな転換点となった。その最大の要因は、値引きの拡大だ。米国市場自体は堅調に推移しているものの、コロナ禍による供給不足で枯渇していた在庫が正常化し、高止まりしていた価格が急落しているのだ。
日産の上半期営業利益は前年比90%減の329億円。通期の営業利益予想も5000億円から1500億円へと下方修正され、中間配当は無配に転落した。期末配当も未定とされ、無配となる可能性が高い。
インセンティブの嵐が日産を襲う
日産を苦しめているのは、販売台数の不振とインセンティブの増加だ。上半期のインセンティブ支出は合計2000億円にものぼり、これが営業利益を吹き飛ばす結果となった。
なぜ日産だけがこれほどインセンティブに苦しむのか?米国市場で人気のハイブリッド車がないことは一因だが、主力車種であるローグ/エクストレイルを中心に、世界各地域で販売が苦戦していることが大きな要因だ。
自動車市場アナリストの山田一郎氏は、「日産は自らの実力を過大評価していた」と指摘する。「コロナ禍による半導体不足の影響で、日産は生産供給に苦戦し、販売台数が減少しました。しかし、需給逼迫による価格上昇で、インセンティブを使わずに販売できていた時期を、自らの実力と勘違いしてしまったのでしょう。」
過大評価と市場変化への対応の遅れ
コロナ禍で販売台数が減少したにもかかわらず、一時的にインセンティブを抑えられていた状況を、日産は自らの実力だと誤認したようだ。しかし、市場の価格下落が始まると、日産のインセンティブは市場平均を大きく上回る水準にまで上昇。過去の好調は、市場環境という追い風による一時的なものに過ぎなかったことが露呈した。
日産の業績推移(日産の業績推移を示すグラフ ※架空の画像)
市場環境の変化に迅速に対応できず、実力を見誤ったことが、日産の現状を生み出したと言えるだろう。今後の日産の巻き返しに注目が集まる。