雪化粧した雄大な富士山と五重塔の美しい調和。この絶景を一望できる山梨県富士吉田市の新倉山浅間公園が、今、海外からの観光客で賑わっています。しかし、その人気ゆえに深刻なオーバーツーリズム問題を抱えている現状を今回は詳しく見ていきましょう。
訪日外国人急増で人気沸騰!でも…地元住民の苦悩とは?
「富士山に最も近い街」として知られる富士吉田市。特に冬には、雪をまとった富士山の荘厳な姿を一目見ようと、世界中から観光客が訪れます。中でも新倉山浅間公園は、富士山と五重塔を一緒に写真に収められるとあって、外国人観光客にとって特に人気のスポットとなっています。
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SNSを通じてこの絶景が世界中に拡散された結果、コロナ禍以降、観光客数は急増。先月には月間来園者数が過去最多の15万人を記録しました。
台湾からの観光客は「The mountain is very beautiful!」、メキシコからの観光客は「とても大きいね…壮大だ!」と感動の声を上げています。しかし、その一方で、地元住民は複雑な思いを抱えています。
オーバーツーリズムの弊害:渋滞、迷惑行為、そして事故
観光客の増加に伴い、公園周辺の住宅街では慢性的な渋滞が発生。静かな住宅街に響き渡る車のエンジン音や、住宅敷地内への無断侵入、さらにはゴミのポイ捨てなど、住民にとっては迷惑行為が後を絶ちません。
住民からは、「家の敷地内でタバコを吸われたり、注意しても言葉が通じない」「渋滞で帰宅できないこともある」「自宅の庭を駐車場と勘違いして車を止められたり、塀を傷つけられたりする」といった声が聞かれました。
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レンタカー同士の交通事故も発生しており、安全面も懸念されています。取材中にも、外国人観光客同士の事故とみられる現場に警察が駆けつける場面がありました。
富士吉田市の対応と今後の展望
市は警備員の配置や駐車場の開設など対策を講じていますが、現状では追いついていません。年間の対策費用は8000万円にものぼっており、市の財政負担も大きくなっています。
これらの問題を受け、市長は公園への入園料徴収を検討する考えを示しました。メキシコからの観光客は「入場料が徴収されても来たい。500円くらいかな、いや1000円くらい取るべきだと思う」と語っており、観光客側にも一定の理解があるようです。
持続可能な観光に向けて:地域と観光客の共存共栄を目指して
新倉山浅間公園の絶景は、まさに日本の宝。しかし、その美しさを守るためには、観光客と地域住民の共存共栄が不可欠です。入園料徴収だけでなく、多言語対応の案内表示の設置やマナー啓発活動の強化など、更なる対策が必要です。
観光客も、訪れる地域の文化やルールを尊重し、マナーを守って観光を楽しむ意識を持つことが大切です。美しい景観を守りながら、観光による地域振興を図る、そんな持続可能な観光モデルの構築が求められています。