お正月、家族みんなで囲む食卓。美味しいお餅は欠かせませんが、毎年、餅による窒息事故が悲しいニュースとして報じられています。楽しいお正月を笑顔で過ごすために、餅の危険性と安全な食べ方について改めて考えてみましょう。
餅詰まり事故の現状
消費者庁の調査によると、2018年と2019年の2年間で661名もの高齢者(65歳以上)が餅による窒息で亡くなっています。そのうち、約65%が75歳以上の方々でした。特に年末年始の三が日には127名もの方が命を落としており、家族にとって深い悲しみを残す結果となっています。
餅を詰まらせたときの対処法は?(写真:Ayleeds/PIXTA)
東京女子医科大学を中心とした研究チームの調査では、餅による窒息事故が発生した場合の1カ月の生存率はわずか17.2%という衝撃的な結果が出ています。餅の粘り気と付着性の強さが、窒息事故の大きな原因となっているのです。
餅が危険な理由
餅の主成分であるアミロペクチンは、枝分かれ構造を持つため絡みやすく、粘度と付着性が高いのが特徴です。これはゼリーの約100倍とも言われており、一度詰まらせてしまうと非常に危険な状態に陥ってしまいます。
さらに、雑煮などで温めた餅は、口の中で冷えて固くなり、飲み込みにくくなります。特に飲み込む力が弱くなっている高齢者にとっては、大きなリスクとなります。
高齢者への注意点
高齢者の場合、餅が消化不良を起こし、大腸に詰まって腸閉塞を引き起こすケースもあると、香川大学の医師たちが報告しています。餅は少量ずつ、よく噛んで食べるようにしましょう。
安全に餅を楽しむために
餅詰まり事故を防ぐためには、以下の点に注意することが大切です。
小さく切って、よく噛む
餅は小さく切り、一口大にしてから食べましょう。そして、よく噛んで唾液と混ぜ合わせることで、喉に詰まりにくくなります。
ゆっくりと食べる
急いで食べると、餅が喉に詰まりやすくなります。ゆっくりと時間をかけて、落ち着いて食べましょう。
水分を摂りながら食べる
水分を一緒に摂ることで、餅が喉を通りやすくなります。お茶やお吸い物などを用意しておきましょう。
周囲の人と注意し合う
特に高齢者や小さな子供と一緒に餅を食べる際は、互いに注意し合い、異変があればすぐに対応できるようにしましょう。
【画像で見る】餅を詰まらせたときの対処法の1つ「背部叩打法」
万が一、餅が詰まってしまったら
すぐに救急車を呼び、119番通報しましょう。同時に、背部叩打法や腹部突き上げ法などの応急処置を試みることも有効です。
背部叩打法
詰まらせた人の肩甲骨の間を、手のひらで強く叩きます。
腹部突き上げ法
詰まらせた人の背後から両腕を回し、みぞおちの少し上あたりに握りこぶしを作り、強く押し上げます。
お正月は、家族みんなで楽しい時間を過ごしたいもの。餅の危険性を正しく理解し、安全に美味しく餅を楽しみましょう。
専門家の声
管理栄養士の佐藤先生(仮名)は、「餅は栄養価の高い食品ですが、窒息事故のリスクも高いことを忘れてはいけません。特に高齢者や小さな子供は注意が必要です。家族みんなで安全な食べ方を心がけ、楽しいお正月を過ごしましょう」と呼びかけています。