杵築市:ゴーストタウン化の危機を乗り越えた地方都市の再生力

この記事では、大分県杵築市がいかにして企業撤退の危機を乗り越え、持続可能な街づくりを進めているのかを探ります。かつて工場バブル崩壊の影響を受けた杵築市ですが、一次産業や観光業といった多様な産業基盤を活かし、新たな活路を見出しています。

激安アパート乱立の背景:工場バブルの光と影

大分県杵築市は、「日本一家賃が安い町」として知られ、築20年ほどの1Kアパートが1万円以下、中には2000円の物件も存在します。人口2万6000人ほどののどかな田舎町に、なぜこれほど多くの空室アパートが存在するのでしょうか?

杵築市の風景杵築市の風景

その答えは、かつての工場バブルにあります。1984年に設立された杵築東芝エレクトロニクス、1999年に設立されたキヤノンマテリアルなどで働く従業員のために、多くの単身者用アパートが建設されました。しかし、2008年のリーマンショックの影響でキヤノン関連企業の派遣社員が大量に削減され、さらに2021年にはアムコー・テクノロジー・ジャパンが工場を閉鎖。これにより、杵築市を離れる人が増え、空室が目立つようになりました。杵築市議会議員・泥谷修氏によると、JAから融資を受けてアパートを建てた農家の多くが、空室増加によるローン返済困難で自己破産に追い込まれたケースもあるといいます。

多様な産業基盤が支える杵築市の底力

リーマンショックや企業撤退の影響は少なからずあったものの、杵築市はゴーストタウン化の危機を乗り越えつつあります。その背景には、ハウスみかん栽培などの一次産業や、杵築城や武家屋敷を活用した観光産業といった多様な産業基盤の存在があります。杵築市役所職員も、「大きな工場だけに依存していなかった点が幸いした」と語っています。

杵築城杵築城

地方創生が叫ばれる中、杵築市の事例は、単一産業への依存を避け、多様な産業を育成することの重要性を示唆しています。地域資源を活かした観光振興や、地元農産物のブランド化など、杵築市は独自の強みを活かした街づくりを進めています。 例えば、観光客向けに歴史的な街並みを散策するツアーや、みかん狩り体験などを提供することで、地域経済の活性化を図っています。また、地元の農産物を活用した加工品の開発や販売促進にも力を入れており、六次産業化による地域経済の自立を目指しています。

未来への展望:持続可能な地域社会の実現に向けて

杵築市の取り組みは、地方都市が直面する課題解決のヒントを与えてくれます。 食料自給率の向上や再生可能エネルギーの導入など、環境問題への意識も高まりつつあります。これらの取り組みは、地域住民の生活の質の向上だけでなく、持続可能な地域社会の実現にも貢献するものと期待されます。 地方創生の成功例として注目される杵築市の未来に、さらなる発展を期待したいところです。