函館市の恵山岬沿岸で発生したタンカー「さんわ丸」座礁事故。重油流出という環境被害をもたらしたこの事故の原因究明が進んでいます。第一管区海上保安本部への取材によると、「さんわ丸」は座礁の危険を知らせる警告に全く応答せず、座礁寸前にようやく「変針する」と応答したとのこと。まるで陸地を認識していなかったかのような不可解な航行に、業務上過失往来危険の疑いが濃くなっています。
警告無視の不可解な航行
「さんわ丸」は苫小牧港から船川港へ向かう途中、津軽海峡で突如針路を陸地に向けて座礁しました。船舶の位置情報を提供する民間サイトの情報からも、この急激な進路変更が確認されています。第一管区海上保安本部は無線やAISメッセージで警告を発しましたが、「さんわ丸」からの応答はありませんでした。その後、ようやく電話が繋がり「変針する」との返答があったものの、時すでに遅く座礁に至ったのです。
alt="座礁したタンカー「さんわ丸」。左舷にはオイルフェンスが設置されている。"
まるで陸地を認識していなかったかのような「さんわ丸」の航行。航海計器の故障、乗組員の疲労、見張り不足など、様々な可能性が考えられます。海上保安庁は当時の運航状況を詳細に調査し、事故原因の解明を急いでいます。
他の船舶からの通報も
実は「さんわ丸」の異常な航行は、付近を航行していた別のタンカーからも通報されていました。この通報は座礁の約20分前に行われ、「さんわ丸が陸に向かっており座礁する恐れがある」という切迫した内容でした。この通報を受け、第一管区海上保安本部は改めて「さんわ丸」への警告を試みたものと思われます。
alt="民間のサルベージ船(右)にえい航されるタンカー「さんわ丸」"
現場海域の気象条件や海流なども考慮に入れ、総合的な観点から事故原因を分析する必要があるでしょう。海難事故専門家の田中一郎氏(仮名)は、「今回の事故は、船舶の安全運航システム全体の脆弱性を露呈したと言えるでしょう。ヒューマンエラーだけでなく、システム全体の改善が必要不可欠です」と指摘しています。
重油流出による環境被害
今回の事故では重油の一部が流出し、周辺の海洋環境への影響が懸念されています。流出した重油の回収作業は難航しており、長期的な環境モニタリングが必要となるでしょう。地元漁業関係者からは、漁業への影響を心配する声が上がっています。
今回の事故は、海上交通の安全確保の重要性を改めて私たちに突きつけました。関係当局による徹底的な調査と再発防止策の実施が強く求められます。