インド、それは悠久の歴史と多様な文化が織りなす魅惑の国。しかし、その輝かしい一面の裏には、旅行者を戸惑わせる現実が存在します。今回は、筆者が実際に体験したインド旅行でのゴミ問題と、その混沌とした状況についてお伝えします。
変わらぬ混沌:ムンバイの街並み
35年前の訪問以来、経済発展を遂げたインド。しかし、ムンバイの街に降り立った瞬間、変わらぬ混沌に驚かされました。バイク、リキシャ、車、バスが入り乱れ、交通信号はまるで無視されているかのよう。牛や犬が車道を闊歩し、歩行者は危険を顧みず道路を横断する。粉塵、排気ガス、クラクションの騒音…まさにカオス。路上生活者の姿も、35年前と変わらず目に焼き付きました。
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根深いゴミ問題:ポイ捨ての文化
インドで最も衝撃を受けたのは、公共の場でのポイ捨ての常態化です。ボンベイ湾の観光船乗り場では、ペットボトルやレジ袋などのプラスチックゴミが入江を埋め尽くしていました。観光客はためらうことなく、ゴミを海に投げ捨てます。ゴミ箱がすぐそばにあるにもかかわらず…。
世界遺産のボンベイ駅でも同様の光景を目にしました。幼い女の子がジュースの空き缶を線路に投げ捨て、母親はそれを注意するどころか、むしろ促すように見えました。ゴミ箱はすぐそこにあったのに…。
列車やバスでも、窓からゴミを投げ捨てるのは日常茶飯事。ゴミ箱が設置されているにもかかわらず、わざわざゴミ箱まで行く人はほとんどいません。親切心から私のコーラ瓶を窓から捨ててくれた紳士の行為は、まさに文化の違いを象徴する出来事でした。
その結果、線路沿いにはゴミの山が連なり、幹線道路脇にも空き瓶やプラゴミが散乱しています。インドでは小学校でゴミの分別教育が行われていると聞きますが、現実との乖離は深刻です。
なぜゴミを捨てるのか?
インドのゴミ問題について、環境問題専門家の山田一郎氏(仮名)は、「経済発展のスピードに環境意識の向上が追いついていない」と指摘します。急速な発展の中で、廃棄物処理システムの整備が遅れ、人々の意識改革も進んでいないことが、現状の問題につながっていると考えられます。
旅行者としての責任
ゴミ問題の現状を目の当たりにし、旅行者として何ができるかを考えさせられました。美しいインドを守るために、私たち一人ひとりができることは、小さなことでも行動に移すことではないでしょうか。例えば、自分のゴミは持ち帰る、ポイ捨てをしない、現地の清掃活動に参加するなど、できることから始めていくことが大切です。
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インド旅行の魅力と課題
インドは、刺激的で魅力的な国であると同時に、多くの課題を抱える国でもあります。ゴミ問題はその一つであり、旅行者はその現実を直視する必要があります。しかし、同時に、この問題を解決しようと努力する人々もいます。
インド旅行は、私たちに多くの学びを与えてくれます。それは、異なる文化への理解、環境問題への意識向上、そして自分自身を見つめ直す機会となるでしょう。