韓国で広がる選挙不正陰謀論について、その深刻な影響と背景を探ります。2020年と2024年の国会議員選挙における保守政党の敗北を受け、左派政党と中国、もしくは北朝鮮が結託して大規模な不正選挙を行ったという主張が一部で台頭しています。この陰謀論は、尹錫悦大統領の支持層を中心に広がり、大規模なデモや裁判所の一時占拠といった事態にまで発展しています。
選挙不正陰謀論の広がりと影響
尹大統領自身もこの陰謀論を支持する姿勢を見せており、SNSで「不正選挙の証拠は山ほどある」と発言しています。大統領支持派は、極寒の中、連日数千人から数万人規模のデモを行い、一部は裁判所を占拠するなど過激な行動に出ています。彼らは「STOP THE STEAL」「CCP OUT」と書かれたプラカードを掲げ、米大統領選におけるトランプ支持者の運動と類似した様相を呈しています。
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朝鮮日報の世論調査によると、国民の43%、保守層の70%、与党支持者の78%が「不正選挙疑惑に共感する」と回答しており、陰謀論の浸透度の深さが伺えます。この影響で、不正選挙疑惑について報じない保守系新聞の購読中止運動が起こり、朝鮮日報は部数が1割減少したと報じられています。
陰謀論の根拠と反論
尹大統領は、偽投票用紙の発見、選挙管理委員会の電算システムの脆弱性、投票者数の検証拒否などを不正選挙の証拠として挙げています。しかし、これらの主張は事実ではないことが明らかになっています。2020年の国会議員選挙に関して126件の訴訟が起こされましたが、不正を認める判決は出ていません。
専門家の見解
選挙制度に詳しい法政大学の小池教授(仮名)は、「これらの主張は根拠に乏しく、選挙システムの脆弱性を指摘する声は以前からありましたが、実際に不正が行われたという証拠は一切ありません」と述べています。また、国際的な選挙監視団体も韓国の選挙は公正に行われたと結論づけています。
大統領側の弁護士は、憲法裁判所の弾劾審判で不正選挙論を主張し、「水原の選挙管理委員会研修院にいた中国人90人あまりが日本国内の米軍基地で不正選挙関連の自白をした」というニュースを証拠として挙げました。しかし、これはフェイクニュースであることが判明しています。
フェイクニュースの拡散
このフェイクニュースは、左派系週刊誌のネット版が「戒厳令宣布後、選挙管理委員会研修院で90人あまりが監禁された」という記事を掲載したことが発端とされています。当初は戒厳令を批判する内容でしたが、これが歪曲され、不正選挙に関与した中国人が監禁されたというデマへと変化し、拡散されました。
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韓国の選挙不正陰謀論は、民主主義の根幹を揺るがす深刻な問題です。事実に基づかない情報に惑わされず、冷静な判断が必要です。