ご即位を言祝(ことほ)ぐ建国の物語 11月8日「海道東征コンサート」



東征の終着地に鎮座する橿原神宮。この地で神武天皇は即位した =奈良県橿原市(恵守乾撮影)
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◆改元の年に偉業を回顧

 北九州市の岡田宮は、初代神武天皇が即位前に行った東征で1年間滞在した地にある。古事記では16年かかったとされる東征で、豊国・宇沙(現大分県)を発(た)った天皇は、竺紫(つくし)の岡田宮で初めて、長期間足を止めた。この滞在は、竺紫に勢力を張る宗像族を警戒したためとも、竺紫の崗(おか)地方を治めていた熊族を完全な支配下に収めるためとも言われる。

 岡田宮の正式参拝者には波多野直之宮司は可能な限り、講座を開く。説くのは天皇を戴(いただ)く日本が、世界でも希有(けう)な長い歴史を持っていること。宮司はスライドで「建国の歴史」と題された数字を映し出す。

 〈デンマーク936年(2位) イギリス1066年(3位) アメリカ1776年 フランス1789年 中国1949年 ロシア1991年〉

 現在の王室や大統領制、共産主義に各国がなった年を並べると、紀元前660年に神武天皇が即位し、以来2679年、連綿と続く皇室を持つ日本が、世界最古の君主国であることが実感できる。

 「日本は世界でも例がない君主国なんです。それは例えば米国の教科書では紹介されているのに、日本の教科書には載っていない。それがおかしいと思うのでこうした活動を続けています」と波多野宮司は言う。世界で2番目に古いデンマーク王室でも1100年足らずの歴史しかないことに比べると、日本の皇室は2倍以上も長い歴史があるのである。

 今年は、その皇室に126代目の天皇が誕生した歴史的な年だ。10月22日には天皇が即位を内外に宣言する即位礼正殿の儀が行われた。126代目の天皇陛下は、天皇しか座れない玉座・高御座(たかみくら)に、黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)という束帯姿で座られた。5月の剣璽(けんじ)等承継の儀は洋装で行われたので、この秋の儀式こそ長い歴史を誇る日本の皇室にふさわしいものだ。

◆思いつなぐハーモニー

 この儀式の翌11月8日、大阪市のザ・シンフォニーホールで行われる交声曲(カンタータ)「海道東征」コンサートも今年は意義深いものになる。この曲の本格的コンサートは大阪、東京合わせて8回目。古事記や日本書紀が書く東征の苦闘を北原白秋が大和言葉で詩に描き、日本洋楽の父とも言われる信時(のぶとき)潔が作曲した曲は、2679年の歴史に思いをはせながら聴くと、今までと趣が違うに違いない。


今年4月に東京芸術劇場で開催された交声曲「海道東征」コンサート (桐原正道撮影)
今年4月に東京芸術劇場で開催された交声曲「海道東征」コンサート (桐原正道撮影)
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 今年から始まった元号・令和は、日本最古の歌集・万葉集を出典にする。美しい調和、ハーモニーといった意味や願いも込められている。神武天皇の東征・国造りも日本人の平和裏の統一を目指して行われたものだ。その足跡は古事記にこう書かれている。

 〈荒ぶる神等を言向(ことむ)け平和(やは)し、伏(したが)はぬ人等を退け撥(はら)ひて(略)天の下治(し)らしめしき〉

 言向け平和すとは、説得して平和裏に応じさせるという意味だ。調和を第一に現代日本に通じる建国を行った天皇の偉業を、美しい音楽で回顧したい。

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■交声曲「海道東征」

 全8章からなる交声曲「海道東征」は、皇紀2600年の奉祝曲として昭和15(1940)年に作られた。詩人、北原白秋がつづった格調高い言葉に、「海ゆかば」で知られる作曲家、信時潔が荘重な音楽を与えた大作だ。戦前、戦中は盛んに演奏されたが、誕生した経緯もあって戦後は演奏機会が激減。そんな中、戦後70年の節目の年だった平成27(2015)年の11月、ザ・シンフォニーホールで行われた演奏は、大阪では戦後初めての再演という歴史的な機会となり、ホールは感動に包まれた。

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 【日時】11月8日(金)午後6時半開演(同5時半開場)

 【会場】ザ・シンフォニーホール(大阪市北区大淀南2の3の3)

 【演目】シューベルトの交響曲第7番「未完成」▽交声曲「海道東征」

 【チケット】S席8千円、A席7千円

 【販売】ザ・シンフォニーチケットセンター(06・6453・2333、午前10時~午後6時、火曜定休)など

 【問い合わせ】産経新聞社事業本部(06・6633・9254)



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