主人公は誰?視聴者をいい意味で欺いた衝撃アニメ3選

アニメの中には、観る者の予想を裏切る仕掛けが凝らされている作品が存在します。「魔法少女モノかと思いきや、途中で全く違うシリアス展開になる」「正義のロボットアニメと思いきや、ロボットが強烈な自我を持つ」など、定番の枠を超えた展開は視聴者に強い印象を与えます。特に、物語の冒頭で「この人物が主人公だろう」と誰もが考えるキャラクターが、実は違ったという展開は、まさに予想外の驚きと面白さをもたらします。この記事では、そんな風に主人公だと思わせておいて、視聴者をいい意味で裏切った衝撃のアニメ作品を3つ(※記事では2例に絞られています)紹介します。

『無能なナナ』:予想を裏切る主人公交代劇

2020年にアニメが放送された『無能なナナ』は、『ガンガンONLINE』(スクウェア・エニックス)に連載中の同名漫画が原作です。特殊な能力を持つ少年少女が集められた孤島にある学園を舞台に物語は展開します。その学園に、なぜか能力が使えないとされる「中島ナナオ」が編入してくるところから始まります。クラスでは「無能クン」と揶揄されコンプレックスを抱くナナオは、転校生の少女「柊ナナ」と出会ったことで運命が変わるかのように見えます。

物語の導入部分だけを観れば、多くの視聴者は中島ナナオが主人公だと考えたでしょう。しかし、ナナオが隠し持っていた「他人の能力を打ち消す」という能力を公表した直後、驚くべき展開が訪れます。なんと、転校生の柊ナナによって崖から突き落とされてしまうのです。

実はこの作品の本当の主人公は、ナナオではなく柊ナナの方でした。これはまさに衝撃のどんでん返しと言えます。「能力者+学園モノ」という定番ジャンルから、ヒーローに憧れるナナオの成長物語が描かれると予想していた視聴者は、見事にその期待を裏切られたことでしょう。ちなみに、同作に描かれるどんでん返しはこれだけにとどまらず、話が進むごとに次々と新たな衝撃が待ち受けています。

『喰霊-零-』:公式が仕掛けた衝撃のミスリード

2008年に放送されたアニメ『喰霊-零-』は、瀬川はじめ氏による漫画『喰霊』の前日譚を描くオリジナルストーリーとして制作されました。原作漫画の『喰霊』では、退魔師として活躍する弐村剣輔が主人公で、ヒロインの土宮神楽と共に妖怪退治を行う物語です。一方、アニメ『喰霊-零-』は、放送前の公式情報では防衛省特殊部隊「超自然災害対策本部特殊戦術隊第四課」、通称「特戦四課」に所属する観世トオルを中心に描かれるアニメオリジナルシナリオだとされていました。

ところが、第1話のラストで観世トオルを含む特殊部隊「特戦四課」のメンバーは、あっけなく全滅してしまいます。そして、第2話からは原作『喰霊』のヒロインである「土宮神楽」と、その姉のような存在である「諫山黄泉」が本当の主人公として描かれることになります。

事前の公式情報で意図的にミスリードを仕掛けたプロモーション展開は、当時の視聴者に強烈な衝撃を与えました。第1話のみの登場ながら、特戦四課のメンバーは視聴者に強い印象を残し、1話限りのキャラクターながら人気を集めたほどです。この第1話のインパクトは非常に強く、今でも多くのファンの間で語り継がれています。
アニメ『喰霊-零-』で真の主人公となる土宮神楽と諫山黄泉のキービジュアル画像アニメ『喰霊-零-』で真の主人公となる土宮神楽と諫山黄泉のキービジュアル画像

視聴者が当然だと思い込んでいる「主人公」の定義を覆すこうした作品は、物語への没入感を高めると同時に、次に何が起こるか分からないスリルを提供してくれます。今回紹介した以外にも、巧妙な仕掛けで観る者を驚かせるアニメは数多く存在し、それが作品の魅力の一つとなっています。