■揺れる「忘れられた人々」
1年後の米大統領選では、トランプ大統領の看板政策「米国製造業の復活」が主要争点となる。かつて鉄鋼業などで栄えた中西部の「ラストベルト(さびついた工業地帯)」では、前回選挙でトランプ氏を支持した有権者の気持ちが揺れていた。 (オハイオ州ローズタウン 塩原永久)
「トランプ氏に票を投じた組合員たちは、誤りに気づき始めている」
労働団体「全米自動車労組(UAW)」でローズタウンを管轄する支部のビル・アダムズ副委員長はこう語る。組合員は伝統的に野党・民主党への支持が強いが、2016年の前回選挙では「4割がトランプ氏支持に回った」という。
◆前回は4割支持
トランプ氏は歴史的な低失業率に胸を張るが、今春、米自動車大手「ビッグ3」のゼネラル・モーターズ(GM)はローズタウンの工場を閉鎖。トランプ氏は「失望した。メキシコや中国では工場を閉鎖しないのに…」と労働者に寄り添って経営陣に再考を求めたが決定は覆らなかった。
GMに抗議する全米ストライキを現地で展開したアダムズ氏は来年11月までトランプ氏が掲げる「米国第一」への熱意が続くことはないだろうと語り、組合員の失望を代弁した。トランプ氏を前回選挙で勝利させた白人労働者ら前政権から「忘れられた人々」の熱は冷めてきているようだ。
◆田舎街の投資熱
オハイオ州西部ワパコネタは「投資ブーム」に沸く。人口1万人に満たない“田舎街”だが、京セラなど海外企業が拠点を置く。特にオーストラリアの梱包(こんぽう)材製造大手プラットの投資計画は住民を喜ばせた。工場拡張に約5億ドル(約540億円)を投じ、300人程度の雇用を見込む。
「オハイオ州で私たちは9万人の雇用を生んだ。その4分の1は製造業だ」
トランプ氏は9月、同社工場でそう言って実績を誇った。オーストラリアのモリソン首相も同席した。