前稿(第1回)は、最新の調査結果*1
から、「職業キャリアの大半を正社員として勤務していた60代」のほとんどが、正社員や契約・嘱託社員としてフルタイムで勤務していること、また、その収入や純金融資産保有額などを見てきた。 第2回は、給与ダウンの有無や仕事の満足度、職場における立ち位置、企業が取るべき施策を掘り下げていく。
*1:パーソル総合研究所 「『正社員として20年以上勤務した60代』の就労実態調査」(2025年2月6日公開)
(藤井 薫:パーソル総合研究所 上席主任研究員)
■ (1)給与が下がった人は「モチベーションが下がった」「キャリアが終わった」
定年後再雇用者は、定年を迎えて再雇用される際に、いわゆる正社員から契約社員や嘱託社員に雇用区分が変わり、その時点で、給与も再設定される。また、定年が65歳であっても、60歳を境に処遇が変わることは珍しくない。
それらのことから、50代から引き続いて同じ会社やそのグループ会社で働く継続勤務者であっても、60代になると給与が下がるというイメージが一般化しているのではないだろうか。
継続勤務者の処遇の見直し状況を見ると、「給与・賞与が下がった」人は60代前半で6割と多数を占めるものの、裏を返すと、残りの4割の人は下がっていない(図表1)。60代後半においてもほぼ同様で、給与・賞与が下がった人は65.1%である。
■(図表1)継続勤務者の処遇変化
一時期、メディアやSNSにおいて、60代に限らず主に中高年の男性社員を「働かないおじさん」や「妖精さん」などと揶揄(やゆ)して、中高年社員のモチベーションの低さを問題視する風潮があった。上記の通り、継続勤務者は給与・賞与が下がった人と下がらなかった人とに分かれており、それに応じて、モチベーションなどの状況も大きく異なっている。
■ 「給与ダウン」で6割が「モチベーション低下」
「給与ダウンあり」の人のうち、60代前半では56.7%が「仕事のモチベーションが下がった」、46.2%が「会社に対する忠誠心が下がった」と回答している(図表2)。これらの回答は、「給与ダウンなし」の人よりも2〜3倍多い。60代後半では、その差はさらに4〜5倍に拡大する。
また、「給与ダウンあり」の60代前半の49.0%が「自分の価値が低下したように感じた」、43.4%が「会社員としてのキャリアが終わったように感じた」と回答。いずれも「給与ダウンなし」の人の2〜3倍であり、60代後半では、その差が4〜5倍近くになる。
やはり、60代の継続勤務者の中にはモチベーションの低い人などが、それなりの割合で存在することは否めないが、「給与ダウン」の影響も大きいと言えそうだ。
■(図表2)処遇の変化による「モチベーション」の変化(継続勤務者)