長野県最北端に位置する豪雪地帯、栄村。1月末の大雪の後、2月1日の朝、「さかえ倶楽部スキー場」にはリフト待ちの長蛇の列ができました。スキーヤーたちのお目当ては、手つかずのパウダースノーが広がる非圧雪コース。バックカントリーさながらの爽快な滑走を満喫できるゲレンデの魅力に迫ります。
非圧雪コースで極上のパウダー体験
静岡県伊豆の国市から訪れた島袋全洋さん(41)は、「雪の状態も良くて、最高です」と笑顔で語りました。一面の銀世界に自分のシュプールを刻む喜びは、スキーヤーにとって格別なもの。さかえ倶楽部スキー場では、この非圧雪コースが人気を集めています。
alt="非圧雪コースを滑走するスキーヤー"
コンパクトながら充実のゲレンデ
貝立山(937メートル)の山麓に広がるさかえ倶楽部スキー場は、全部で9つのコースを有しています。ゴンドラリフトなどはありませんが、コンパクトでアットホームな雰囲気が魅力。大規模スキー場とは異なる、落ち着いた環境でスキーを楽しみたい方にぴったりです。
バックカントリー級の爽快感!人気の秘密
さかえ倶楽部スキー場の人気の秘密は、何と言っても豊富な新雪と非圧雪コース。多い時には一晩で50センチも積もるという栄村の雪は、まさにパウダースノーの宝庫。同スキー場は2月末までの平日は、一部コースを除いて非圧雪にこだわっています。最大斜度20~30度台のゲレンデは、中上級者も満足できるチャレンジングなコース設定。スキー場にいながら、バックカントリーのようなスリリングな滑走体験が楽しめます。晴れた日には、苗場山、鳥甲山、越後三山などの壮大な景色も堪能できます。
非圧雪へのこだわりとパウダースノーブーム
さかえ倶楽部スキー場が非圧雪を売りにし始めたのは約10年前。平日の利用者が少なかったことを逆手に取り、豊富な積雪量と中上級者向けコースの特性を生かそうと考えたのがきっかけでした。近年、「パウダースノーブーム」という追い風もあり、まとまった降雪がある時ほど多くのスキーヤーで賑わいます。開業当初から運営に携わる斉藤雅広さん(60)は、「当初は人が全然来なかったのに、変われば変わるもの」と驚きの声を上げています。
例えば、スキー専門誌の編集長(仮名:山田一郎氏)は、「さかえ倶楽部の非圧雪コースは、まさにパウダースノーの聖地と言えるでしょう。自然の地形を活かしたコース設計は、スキーヤーに最高の体験を提供してくれます。」と高く評価しています。
村直営スキー場が生み出す地域活性化
多くのスキー場は民間企業や指定管理者が運営していますが、さかえ倶楽部スキー場は開業当初から村が直営しています。かつて栄村の冬は豪雪に閉ざされ、レクリエーションも少なく、出稼ぎに出る村民も多かったそうです。スキー場建設は冬の産業を育成し、若者の定住を促進するための一大事業でした。「さかえ倶楽部」というユニークな名称には、スキー場を拠点に村内外の人々が集い、共に活動するコミュニティを築きたいという願いが込められています。
村直営ということもあり、村民向けのシーズン券は大人8,000円、高校生5,000円と大変リーズナブルな価格設定。(村外在住者は大人30,000円など)。村内の各世帯には、リフト1日券や用具レンタルの割引券も配布されています。村民向けのスキー教室を毎年開催するほか、スキーをしない村民も楽しめるよう、スキー場のレストランで割引券が使える「感謝デー」も企画。地域住民への配慮も行き届いています。
未来への希望を乗せて
地元の小中学生はリフト代がいつでも無料で、学校のスキー教室でも毎年訪れています。村職員時代にスキー場開業に向けて尽力した宮川幹雄村長(71)は、「村の子どもたちにはこのスキー場で楽しみ、栄村に住んでいることに自信と誇りを持ってほしい」と願っています。さかえ倶楽部スキー場は、スキーヤーにとってのパラダイスであるだけでなく、地域活性化のシンボルとして、未来への希望を乗せて走り続けています。