USAID(アメリカ国際開発庁)の解体計画が物議を醸している。トランプ大統領は「(USAIDは)およそ97%の職員が解雇となる。非常に残念なことだ」と話し、2月11日には、各省庁に政府機関のリストラに協力するよう指示する大統領令に署名した。
USAIDは1961年に設立され、世界の紛争地域や貧困地域で、食料や教育、衛生支援などを行ってきた機関だ。トランプ氏はSNSで「USAIDは急進左派が狂わせ、腐敗している」「多くの資金が民主党に有利な報道をするための報酬として、ニュースメディアに支払われた」と投稿し、資金が民主党の政治的プロパガンダに使われたことを閉鎖理由としている。
新たに生まれた政府効率化省(DOGE)のトップである実業家のイーロン・マスク氏も、「USAIDが閉鎖的な組織運用をしている」「USAIDには、選挙に影響を与えるような、怪しくて陰に隠れるような行動が多かった」と指摘する。
DOGEなどによる「アメリカ版事業仕分け」で話題となっている、今回のUSAID閉鎖はなぜ起きたのか。『ABEMA Prime』では、有識者とともに影響を考えた。
■国際支援6兆円の大半がいきなりストップ、1万人も失職する事態に
そもそも、USAIDとは何か。アメリカの海外での人道支援や開発援助を行う、国務省とは独立した組織(出典:朝日新聞社)で、2023年の援助実績は、アメリカの国際援助における支出の約6割にあたる400億ドル(約6兆円)にのぼる(出典:BBC)。2022年2月以降、ウクライナに対し人道支援で26億ドル(約4000億円)、開発援助で50億ドル(約7700億円)などを提供(出典:AFP通信)し、職員総数は1万人以上(約3分の2が海外勤務)、60以上の国と地域のミッションがあるとされる。
そのUSAIDが、トランプ大統領の指示により解体されようとしている。ほとんどの直接雇用職員を全世界で休職とし、海外で働く数千人の職員を30日以内に帰国させる。また、対外開発援助の効率性と外交政策との一貫性評価を行うとして、90日間の援助停止を行う。
改革を主導するDOGEは、Department of Government Efficiencyの略で、「官僚主義を解体し過剰の規制と無駄な支出を削減する」「連邦政府を再編する道筋を切り開く」ことを目的とし、トランプ氏は「現代のマンハッタン計画になる」と発言している。トップであるマスク氏は、大幅な人員削減やUSAIDの閉鎖などを求めている。
ニューヨークを拠点に大統領選などの取材を行っているジャーナリストの津山恵子氏は、「アメリカではUSAIDの存在を知らない人の方が多く、突然1万人が職を失ったことにショックを受けている」と話す。「イーロン・マスク氏率いるDOGEが、一挙両断にやっていることが、大きな問題だと報じられている」。
再編そのものについては、「リストラすべき所はしたらいい」とするが、「他の省庁にも当てはまる」という。「USAIDに焦点が当たったのは、ポリティカルな思想もかかるところに、予算が割かれているためだ。国家予算の0.6%程度だが、そこに目を付けて一網打尽にしようという考えがホワイトハウスにあったのだろう」と推測した。