ハンガリー邦人女性殺害事件:DV相談受けていた大使館、対応に疑問の声も

ブダペストで発生した日本人女性殺害事件。アイルランド人の元夫に殺害されたとされるこの事件は、DV被害の深刻さを改めて浮き彫りにしました。外務省は、現地の日本大使館が生前女性からDV被害の相談を受けていたことを明らかにしましたが、その対応の妥当性について疑問の声も上がっています。

DV相談から事件発生まで:大使館は何をしていたのか?

岩屋毅外相は記者会見で、大使館が2022年6月に女性からDV相談を受け、警察への被害申告を促したと説明しました。また、昨年夏頃には子供のパスポート発給について問い合わせを受け、元夫の同意が必要だと説明したものの、その後申請はされなかったとしています。

altaltハンガリー日本人女性殺害事件を受けて会見する岩屋毅外相

しかし、現地報道によると、女性は警察に複数回DV被害を申告していたにもかかわらず、捜査は行われていませんでした。当局は後に落ち度を認め謝罪しましたが、大使館の対応にも疑問が残ります。DV被害の深刻さを理解し、より積極的な支援を行うことはできなかったのでしょうか?例えば、現地のDV支援団体との連携や、子供のパスポート発給に関する更なるサポート、緊急時の避難場所の提供などは検討できなかったのでしょうか?

専門家の見解:大使館の役割と限界

DV問題に詳しいA子氏(仮名)は、「在外邦人のDV被害は、言語の壁や文化の違いなどから、より深刻な状況に陥りやすい」と指摘します。「大使館は、被害者の安全確保を最優先に、関係機関との連携を強化し、迅速かつ適切な支援を行う必要がある」と述べています。

一方で、大使館の権限には限界があるのも事実です。B男氏(仮名)は、国際法の専門家として、「大使館は他国の内政に介入することはできない」と説明します。「警察への捜査協力要請は可能だが、強制力はない。そのため、現地のDV支援団体との連携強化や、被害者への情報提供などが重要になる」と話しています。

今後の課題:在外邦人保護の強化に向けて

今回の事件は、在外邦人保護のあり方について、改めて考えさせられるものです。大使館は、DV被害者への支援体制を強化し、よりきめ細やかな対応を行う必要があります。また、政府全体としても、在外邦人保護のための予算や人員の確保、関係省庁との連携強化など、抜本的な対策を講じる必要があります。

具体的には、以下のような対策が考えられます。

  • 現地DV支援団体との連携強化
  • DV被害者向け多言語情報提供の充実
  • 大使館職員へのDVに関する研修の実施
  • 緊急時の避難場所の確保
  • 帰国支援制度の拡充

今回の事件を教訓に、在外邦人の安全と人権を守るための取り組みを強化していく必要があります。