停戦交渉「何を許容するか 決めるのはウクライナ」 元CIA高官


 ――交渉開始をどうとらえていますか。

 トランプ大統領は大統領選で、対ウクライナ政策を変更したい、戦争を終わらせたいと明確に訴えてきました。ここ数日、バンス副大統領やヘグセス国防長官が欧州を訪れ、物事をその方向に強力に推しすすめています。一方で、欧州の国々からは、和平を強制した場合にどのような取引になるのか、ロシアの立場がいま以上に強くなるのではないか、という懸念が聞こえてきます。

 戦争はもう3年も続いていますから、終結をもたらすべきかどうかを判断するには適切なタイミングです。しかし、ロシアのプーチン大統領は米国や同盟国への脅威であり続けますから、さらなる威嚇を防ぐことが米国の核心的利益です。

 ――米国はどうすべきですか。

 我々は、ウクライナの弱体化や欧州の同盟・友好国を何らかの形で脅かすような「戦争の終結」は望まないし、ロシアが武力で領土を奪うことは許さない、というメッセージを明確に発信することが重要です。もし我々がウクライナを見捨て、欧州での責務を放棄すれば、プーチン氏を勢いづかせるだけです。

 ――トランプ政権はウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を早々に否定するなど、交渉前に譲歩しているように見えます。

 私には複雑なメッセージを送っているようにも見えます。あらゆる選択肢を残すことが重要であり、正式加盟、あるいは非常に重要な協力関係を結ぶ可能性は残しておくべきです。

 重要なのは、ウクライナに安全保障の傘があることをロシアに明確に示し、領土をさらに奪ったり、ウクライナの主権をさらに脅かしたりするような試みには、米国とその同盟・友好国が軍事力を使って対抗する、と示すことです。ウクライナの安全保障の長期的な実現は、米国が関与しない限りあり得ません。

 ――トランプ氏は支援の見返りにレアアースを要求しています。

 米国の軍事支援は、ウクライナがお金を払えるか、あるいは重要な鉱物を支払いに充てられるかを条件にすべきではありません。それはあまりに商取引的です。それよりも私たちは、ウクライナの領土保全は守られなければならないという基本原則に、よって立つ必要があります。

 ――領土奪還は現実的に難しくありませんか。

 領土をどう考えるか。それはウクライナの将来についてゼレンスキー大統領が何を望むかにかかってきます。

朝日新聞社



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