■参考人招致が51年ぶりに賛成多数で議決
31年ぶりに少数与党で迎える通常国会が1月24日に召集され、石破茂首相が施政方針演説を行ったが、自ら掲げた「令和の日本列島改造」にしても、「楽しい日本」にしても、自分の言葉ではなく、具体的な長期戦略も、独創性も、新鮮味もない内容だった。首相自身、その場しのぎで、「権力が首相官邸になく、国会の与野党協議にある以上、どうしようもない」と居直っていると聞く。神輿の担ぎ手も定かでなく、政権は「漂流」している。
国会の与野党攻防も一変した。1月30日、衆院予算委員会で自民党派閥の政治資金規正法違反事件をめぐって、旧安倍派の元会計責任者の参考人招致が51年ぶりに賛成多数で議決されたのだ。与党も対応が割れ、自民党は反対し、公明党は退席した。参考人招致は全会一致が慣例だが、立憲民主党の安住淳衆院予算委員長の判断で多数決での決着となった。
予算案の年度内成立に向け、政府・与党は、国民民主党や日本維新の会の賛成を得るため、その要求を取り入れる予算案の修正を作業しているほか、立憲民主党の修正案にも耳を傾けている。自民党は森山裕幹事長を司令塔に野党対策を続けることになるが、その一方で公明党の斉藤鉄夫代表が1月29日の朝日新聞のインタビューに「連立離脱はあり得る」と発言するなど、自公の与党間でこのところギクシャクする場面も目立っている。
■「楽しい日本」の核心は「地方創生」
石破首相は、施政方針演説で「『楽しい日本』を実現するための政策の核心は『地方創生2.0』だ。これを『令和の日本列島改造』として強力に進める」と打ち出した。
「地方創生2.0」は、「一極集中を是正し、多極分散型の多様な経済社会を構築していくもの」と説明する。「楽しい日本」は、堺屋太一元経済企画庁長官の著書から引き、国家主導の「強い日本」、企業主導の「豊かな日本」を経て、一人一人が主導し、多様な価値観を持つ個人を重んじて自己実現を図っていく社会を目指すのだという。
これに対し、立憲民主党の野田佳彦代表は1月27日の代表質問で、「内外の厳しい情勢を鑑みると、明らかに上滑りしている」と疑問を投げ掛けた。もっともというほかない。
自民党からも異論が出た。31日の衆院予算委員会で、小野寺五典政調会長は「まず作り上げるべきは強い日本だ。トランプ(米大統領)流にいえば、Make Japan Strong Againではないか」と質した。石破首相は「『この時代に楽しくかよ』とお叱りをいただくが、やっぱりわくわくする楽しさというものを地方に広げていく」と答弁したが、説得力に欠けよう。