労務相談やハラスメント対応を主力業務として扱っている社労士である私が労務顧問として企業の皆様から受ける相談は多岐にわたります。経済や社会情勢の変化によって労働問題やハラスメントの捉え方も変わり、従業員側のほうがむしろ強気に出られるような場面も見られるようになりました。
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今回は、適応障害を発症し休職した社員の復職をめぐるトラブルについて匿名化してご紹介します。
思いもよらない事態が発生
私のもとへ相談を寄せたのは、交通インフラ事業を手掛けるI社で総務部長を務めるU野(50代・男性)さんでした。
U野さんは入社以後ずっとバックオフィス業務に従事。管理部門に精通し、I社にとっては生き字引のような存在です。したがって社内でなにか問題が起きても、U野さんの幅広い知識によって、たいていのことは自社内で解決できていました。
しかし今回、経理課に所属するK林さん(30代・女性)の事例は、U野さんにとっても初めてのことで私に相談を持ち掛けてきました。
その内容とは、適応障害で休職中のK林さんへの対応策についてでした。話を聞くと、どうやらK林さんはU野さんにとっても、ほかの従業員にとっても目にあまる「モンスター社員」のようでした。
「弊社にも休職規定があります。私傷病の場合と業務起因の場合で長さが違うので、何が原因か教えてほしいと尋ねました。すると、K林は課長のS木が原因だというんですね。パワハラがあったというんです」
「S木さんというのは直属の上司ですね。パワハラの事実の調査はなさいましたか」
「はい、S木本人も希望しましたので、弊社のハラスメント調査委員会で調査をしました。結果としては、パワハラに相当するような事実はなかったようです。どうも、K林はもともと僻みっぽいというのか、単に確認や質問をしても責められているとネガティブに受け取る癖があるようです」
入社15年目のS木さんは、穏やかな性格で自己研鑽も熱心な人柄です。私が講師を務めるオンラインセミナーにもたびたび参加しており、マネジメントにも強い関心を持っています。
K林さんは入社後3年目で、I社が転職3社目というキャリアでした。入社後の配属先は広報に関する部署でしたが、部署の業務を整理再編した際に経理課に配置換えになりました。