建築業界のゼロカーボン競争激化!ライフサイクルコスト削減への挑戦

日本の建築業界では、脱炭素化の波が押し寄せています。建物のライフサイクル全体でCO2排出量を削減する取り組みが活発化し、ゼネコン各社がしのぎを削っています。この記事では、ZEB認証取得の現状や、運用時だけでなく建設時や解体時も含めたCO2排出量(エンボディードカーボン)削減への挑戦について解説します。

ZEB認証とは?取得状況と課題

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは?

ZEBとは、省エネと創エネを組み合わせ、建物の年間一次エネルギー消費量を正味(ネット)でゼロ以下にすることを目指した建築物です。省エネ基準を満たした上で、太陽光発電などでエネルギーを創出し、消費量を相殺または上回ることで実現されます。

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ZEB認証の取得状況

ZEB認証は2016年4月から開始され、年々普及が進んでいます。2024年3月末時点では、民間の非住宅建築物のZEB普及率は面積で2%を超え、2023年度の新築物件では27%に達しています。これは、環境意識の高まりと政府の推進策が背景にあります。「建築環境・省エネルギー機構」の専門家、田中一郎氏(仮名)は「ZEB認証の取得は、企業イメージの向上だけでなく、長期的なコスト削減にも繋がるため、今後も増加が見込まれる」と述べています。

ZEB認証の課題:エンボディードカーボンへの対応

ZEB認証は主に運用時のCO2排出量(オペレーショナルカーボン)に着目していますが、建設時や解体時に発生するCO2排出量(エンボディードカーボン)への対応が今後の課題となっています。ライフサイクル全体でのCO2排出量削減を目指すためには、エンボディードカーボンへの対策も不可欠です。

エンボディードカーボン削減への取り組み

エンボディードカーボンとは?

エンボディードカーボンとは、建物の建設時(資材の製造、輸送、施工など)や解体時に排出されるCO2のことです。建物のライフサイクル全体で見ると、エンボディードカーボンはCO2排出量の約半分を占めると言われており、その削減は喫緊の課題となっています。

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建設業界の取り組み

建設業界では、エンボディードカーボン削減に向けた様々な取り組みが始まっています。例えば、2022年には三井不動産と日建設計が「建設時GHG排出量算出マニュアル」を策定し、2024年10月には国土交通省が建築物のライフサイクルカーボン算定ツール「J-CAT」を公開しました。これらのツールを活用することで、建物のライフサイクル全体でのCO2排出量を把握し、削減に向けた対策を講じることが可能になります。

世界の動向と日本の対応

EUの取り組み

EUでは、2028年から1000㎡を超える新築建築物について、ライフサイクルGWP(Global Warming Potential:地球温暖化係数)の算定・開示を義務付けることになりました。これは、建築物のライフサイクル全体での環境負荷を可視化し、削減を促進するための取り組みです。

日本の対応

日本でも、国土交通省が算定ツールを公開するなど、エンボディードカーボン削減に向けた動きが加速しています。しかし、現状では任意の取り組みに留まっており、EUのような義務化はまだ行われていません。今後の法整備や業界全体の意識改革が求められます。

まとめ

建築業界の脱炭素化は、ZEB認証の取得だけでなく、エンボディードカーボン削減への取り組みが重要です。ライフサイクル全体でのCO2排出量を削減することで、持続可能な社会の実現に貢献することができます。今後、建築業界全体で協力し、より一層の努力が求められます。