今年6月、新潟市東区のクリーニング業「新潟県リネンサプライ」の工場で火災が2件相次ぎ、新潟市東消防署が連続放火の疑いがあるとみていることが7日、分かった。2件目の火災では火元が2カ所もあった。工場は全焼し、同社は廃業に向けた手続きを進めている。
同署が作成した火災調査書などによると、最初の火災は6月4日午前2時ごろに発生し、第1工場の一部を焼いた。続く24日午後11時半ごろには、第2工場で出火。第1工場へ延焼し、木造一部鉄骨平屋両工場が全焼した。いずれの火災も発生当時、工場は操業しておらず無人だった。
その上で、火災現場の状況などから、4日の火災はショートなどの失火の可能性は低く、「何者かが火をつけた放火によるもの」と推定。24日の火災では、火元は第2工場の西側と東側の2カ所にあったことが判明。「放火による出火の可能性が極めて高い」と分析している。
新潟県警新潟東署は、24日の火災を放火の疑いがあるとみて捜査。現場付近の防犯カメラの映像の解析や聞き込みを進めている。
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連続放火の可能性がある新潟県リネンサプライの工場の跡地は現在、整地され、同社のプレハブ製の事務所があるだけだ。
民間調査会社によると、同社は平成6年設立。事業所向けのクリーニングや同業者の下請けなどを営んできた。従業員数は約50人だった。
同社によると、火災発生後は廃業に向けて手続きを進めており、役員と事務担当者1人だけが残ったという。
工場で10年以上働いていた男性は「薬品がたくさんあったから、あっという間に燃えたのかもしれない。だれがなぜこんなことをしたのか」と話し、かつて職場があった空き地を力なく見つめた。
県警幹部は「建物だけでなく、従業員とその家族の生活にも被害を与える重大な犯罪だ」と指摘する。
同社社長は火災に関する産経新聞の取材に対し、事務担当者を通じて「まだ(心の)傷が癒えていない。もう少し時間が必要だ」と回答した。