8日に行われた政府の「全世代型社会保障検討会議」の第2回会合では、患者負担増に反発する日本医師会などの三師会と、容認する経団連などの経済界による対立の構図が鮮明となった。受診抑制につながりかねない政策を避けるよう求める医師会に対し、持続可能な制度を維持するために負担増はやむを得ないと考える経団連。医療費をめぐる攻防は激化している。
会議では、日本医師会の横倉義武会長が「患者、国民の安心につながる丁寧な議論をしてほしい」とクギを刺し、特に外来で受診した人の窓口負担に一定額を上乗せする受診時定額負担の導入について「最大でも負担は3割までという原則を破るものだ。容認できない」と明確に反対した。
財政的な観点から患者負担増を容認する中西宏明経団連会長は、早速横倉氏に質問した。
「制度の持続可能性をどう担保するのか。若い人が将来に不安をもっている。高齢者に負担してもらってもいいのではないか」
これに対し、横倉氏は「若人であれ、高齢者であれ、負担能力があるかないかで区別すべきだ」と反論。両者の考え方の違いが鮮明になった。
経済同友会の桜田謙悟代表幹事も「この会議の最大の眼目は、若い人が希望を持てる社会を作れるかどうかだ。ものすごく国民が注目している」と中西氏に追随したが、横倉氏が主張を譲ることはなかった。
患者負担増となる政策は受診を控えることにつながり、軽症が重症化し、医療、介護の費用を増やすリスクがある-。これが三師会の共通認識だ。しかも医師会は地域医療の充実に向け、何でも相談できる「かかりつけ医」の普及を目指しており、これに水を差しかねない。
自民党厚生労働族も医師会側に加勢。羽生田俊参院議員は7日の参院厚労委員会で、患者負担増の議論を主導する財政制度等審議会(財務相の諮問機関)について「メンバーは経済界などから出ているが、恵まれた生活をしている人ばかりだ。疾患を抱え闘病生活を送っている患者の気持ちをどこまで理解しているのか」と一喝した。
財務省主導の動きに批判的な横倉氏は、首相と昵懇(じっこん)な間柄にある。なおかつ財務省を率いる麻生太郎財務相とは同じ福岡県出身。最終的に首相と麻生氏で政治決着する可能性がある。(坂井広志)
医師会、患者負担増に反発 経団連を牽制 全世代型社会保障検討会議